秋に鳴らす鍵盤
愚者の鱗
第1話『訃報』
母方の祖母が亡くなった。そう連絡が入ったのは、拷問かと言いたくなるような猛暑が、ようやく落ち着きを見せた日の事だった。
その日私は氷の入ったミルクティーを飲みながら、『あーでもない、こーでもない』とうなりながら宿題に取り組んでいた。私はどちらかと言えば不真面目な方で、授業中にこっそりスマホをイジっていることも多い。要は授業を聞いていなかったから、問題の解き方が分からないのだ。
「仕方ない、明日先生に聞くかぁ」
最初から授業をちゃんと聞けと言われるかも知れない。それはそうである。だがしかし、私は反論したい。教科書を後で読めば十分理解できると思っていたのである。つまり、私は悪くない。悪いのは、分かりにくい教科書の方なのだ。
ただ、それはそれとして。流石の私も、赤点を取ったり、留年なんかしたくはない。そしてそれは、明日の放課後の私が解決してくれるだろう。
つまり、今日はもう遊んでも良いのだ。まさにそう思ってスマホを手にした瞬間、私の部屋にノック音が鳴り響いた。母である。仕方ないのでスマホを机に置いて、ドアを開けに行った。そこには珍しく暗い顔をした母が立っていて、絞り出すように私に告げた。
「おばあちゃん、亡くなったって。ついさっき、連絡が有ったの」
ここ数年疎遠になっていた、最後の祖父母の訃報を、私は直ぐに受け止められなかった。
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