case2 (前半) 冴羽柚子の場合
今回は前回に引き続き、謎のサイトを使った人物である冴羽柚子さん(仮名)に
話を聞いていこうと思う。
松井 冴羽さん、本日はお時間を取っていただきありがとうございます。
冴羽 いえ、あのサイトのことは沢山の方々に知ってもらった方が良いと思いますから。
松井 そうですか。では、早速冴羽さんはなぜあのサイトを使ったのか教えていただけますか?
冴羽 はい、私が使ったのは3年前の12月ごろだったと思います。
3年前
「うーん、どっちが良いかな。」
明日は久しぶりに友人と会う。お互い仕事が忙しく中々会う機会はなかった。
だけどお互い仕事が少し落ち着いてきたので明日久しぶりに会うことになった。
明日、どんな服を着て行くか悩んでいると、携帯の通知が鳴った。
「ん?誰だろう。」
携帯を見ると彼氏の弘大からメッセージが届いていた。
「⚪︎日どこで待ち合わせする?」
「え?」
その日は弘大とデートをする予定はない。だったら誰に送ったんだろう?
そう思っていると、そのメッセージが消えた。
ふと、そういえば最近の弘大の行動がおかしいと思った。
携帯をずっと離さないし、デートをする頻度も減った。
もしかして浮気してる?
でもあの弘大に限って、、、
私は明日の遊びの事などすっかり頭の中から忘れ去っていた。
数日後
弘大の謎のメッセージが来てから数日後、今日はそのメッセージに書かれていた日だ。弘大には悪いと思いながら、弘大の家から弘大を尾行する事にした。
弘大は絶対に浮気なんかしないと思っていた。だけど現実はそう甘くなかった。
弘大はある駅に着いてスマホを見ながら誰かと待ち合わせしているようだった。
しばらくすると、弘大は誰かに手を振っていた。
その先にいたのは私が知らない女だった。
二人は手を組んで駅の中に入っていった。私はその後を追えなかった。
本当は後を追いかけて弘大に問い詰めたほうがいいのだろう。でもそんなことは今の私にはできなかった。ずっと信じてきた彼氏に裏切られた状態で追いかけることはできない。その後の記憶はあまり覚えていない。気づいたら次の日の朝になっていた。
私は会社に入社してから初めて休みを取った。そしてまた思いっきり泣いた。
一通り泣き終わると、次に弘大に対して生まれたのは悲しみではなく「憎しみ」と言う感情だった。ずっと上手く行っていると思っていた。なのに、私は裏切られていたのだ。復讐してやりたい。
ふと、スマホを見る。SNSを開き、最近見た投稿の中で一つ気になる投稿があったのだ。あまりいいねなどはついていなかったけれど、気になっていいねをしていた。
「復讐代行サービス」
この広いネット上の世界の中にあるサイトの一つ。サイトの中は至ってシンプルで
「あなたの復讐代行します。」いかにも怪しいサイトだ。
「でも、本当に代行してくれるのかも?」
私はとりあえず電話をしてみる事にした。
電話をするとイメージと違い普通の人が対応してきた。
「あの、復讐サービスを使いたいのですが。」
「わかりました。一週間後の○日〇〇ビルまでお越しください。」
「わかりました。」
一週間後
代行サービスの電話で伝えられた場所に行く日がやってきた。行くまでの間代行サービスについての情報をネットで調べてみたが例の投稿以外何もなかった。騙されているのではないのか気にはなったが、とりあえず話だけでも聞こうと思い向かう事にした。階段を登り、指定されていた階へ向かう。
「電話でお話した以来ですね、冴羽様。」
「ひっ!」
「そんなに驚かなくても大丈夫ですよ。担当の後藤と申します。」
「は、はぁ。」
後藤と名乗るその男は、葬式場にいてもおかしくない服装で私の前に立っていた。
「それで、今回復讐されたい人はどんな人物ですか?」
「あ、えっと私の恋人なんですけど。」
「なるほど、恋人ですか。よくいるんですよね。恋人に対して復讐したいと言う方。」
「何か、すいません。」
「いえいえ、こちらも仕事ですから。」
「それで、恋人の方に対してどのような復讐をお望みですか?」
「それが、まだ決まってないんです。私も浮気されていたことで頭がいっぱいで、、、」
「大丈夫ですよ。大体このようなご依頼をしてくる方は、社会的に潰したいと言ってくる方が多いのですが。冴羽様はどうなさいますか?」
その言葉を聞いて私の中で少し迷いが生まれた。弘大に対して憎しみの感情を抱いて復讐してやりたい気持ちはある。ただ社会的に潰すとまでは願わない。
それは、多分ずっと一緒にいたからなのかもしれない。
信じていた分裏切られて、でもどこかまだ本当に浮気をしていないんじゃないか。
何かの見間違いなんじゃないか。後藤さんの言葉を聞いてそんな思いがどこかにあったのを見ないふりをしていたことを私は気づいてしまった。
「、、、少し復讐についてのこと考えさせてもらえませんか。」
「と、おっしゃいますと?」
「まだ、本当に自分の中で依頼をするべきなのか迷っているんです。」
「わかりました。では依頼をしたくなったらまたお電話をかけてください。」
そう言って、後藤さんは名刺を差し出してきた。
後藤という苗字と電話番号しか書かれていないシンプルな名刺。私は、その名刺をもらってその場から立ち去った。
「さて、あの方はどのような依頼をしてくるのか楽しみですね。」
あなたの復讐代行します NARU @narukama
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