25. 無感情のお化け

 黒猫が毛を逆立てても、若鳥が翼を広げても、そのお化けはぴくりともしなかった。濁った目でふたりを見下ろして、それからアリソンを見つめて、それでも何も言わずにただ立っていた。

 顔の前で手を振ってみても、無反応。邪険にされることもない。まるでアリソンたちが居ないかのよう。――だけど。

 この無感情のお化けのほうが、ずっと存在が希薄だった。ただ在るだけの事象でしかなかった。

 そんなの、在る意味があるのだろうか。

 魔女の手でお化けに触れた。少しだけお化けの目蓋が震える。まだ彼に意識の欠片は残っている。

「一緒に行きましょう」

 これまでに会った自由なお化けたちとまるで違う彼が哀しくて、アリソンはお化けの手を引っ張った。

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