23. 哀しむお化け

 そのお化けは波打ち際に座り込み、しくしくと涙を流していた。あまりに哀れな姿に、アリソンは思わず声をかける。

 お化けは身の上を語った。愛しき人がいたが、想いは通じず失意に暮れているところを、さらに誰かに殺されてしまったのだという。

「きっとあの人は、私を捜してくれないわ」

 そして、自分が死んだことさえ知らず、誰かと幸福に生きるのだろう。

「そう思うと、哀しくて」

 愛しき人の〝何〟にもなれなかった。心の片隅にも入り込めなかった。その事実が哀しむお化けを打ちのめしているようだった。

「私に何の意味があったのかしら」

 アリソンはお化けに寄り添った。波音が二人を包む。

 お化けは透明な涙を流す。その雫はとても美しかった。

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