第3話 七海
「今、後ろから何か聞こえたような?」
私は怖いので気にせずに歩くことにした。
旧校舎は地上3階地下1階の計 4階建てだ。
私がいるのは、正面玄関から進んだ中央廊下だと思う。
旧校舎の間取りは念のため調べてきていた。
逃げ道を覚えるためだったはずなのに、逆のことをしているなんて皮肉だろうか。
私は、トイレの表示があるところ、教室の前、そして校舎の外を探したいが、外はおそらく出ることができないからこの二つのエリアでいいと思う。
1階から順番に3階まで回ったのだが、どこも水道の蛇口が切断されていたり、そもそも水道自体が取り壊されていたりと水が出せるような状態ですらなかった。
「はぁ、3階まですべてダメ。ということは旧校舎の地下、つまりこの現象のすべての始まりであるところに行かなくてはいけないのか」
私は、恐怖で縮こまってしまいたいのをどうにか収めながら、地下へと続く階段を探した。
すると、しばらくすると誰かが倒れているのが分かった。
「っ…七海っ」
それは七海だった。
何か紫色の靄のようなものが見える。
きっと、このせいで七海は倒れてしまったのだろう。
私は七海がまだ息があることを確認した。
そして、七海の手に握られている紙も。
「ん?紙?」
読んでみると、私宛へのものだと分かった。
内容はこうだ。
『真央へ
この手紙をあなたは見つけてくれたかな。
まさか、入って早々にはぐれるとは思いもしなかったよ
私が歌っていたの聞こえた?
私は、実は前に一度ここに入ったことがあるの
その時に私は、地下へと続く階段を見つけた
でも、水の出る場所へは永遠とたどり着けなかった
そう
私は今もこの中をさまよい続けている
学校へは私が分身して通い続けている
もしも卒業までに見つからなかったら、私はどうなってしまうのかわからない
だからお願い 真央
私を助けてほしいの
私が倒れているところから少し行くと階段がある
その階段の裏側に扉があって、そこを開けると地下へと続く扉があるわ
その先のことは言えないけれど、あなたならきっと大丈夫だから
時折聞こえる、歌や囁き声によく耳を澄ませて
きっと手助けしてくれる』
「私は、どうすれば…」
七海を助けるべきなのは、自分でもわかっているのだ。
だが、 そのための勇気がない。
自分もさまよい続けることになったらと思うと怖くて仕方がない。
「真央、助けて、怖いよ」
そんな声が聞こえた気がした。
そうだ七海はずっとこの暗闇の中にいるんだ。
私に助けを求めてきたんだ。
ここで助けなくてどうするんだ。
私は、階段の裏側にある扉を開けた
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