第2話 旧校舎

ある日、友達の七海に誘われました。


「旧校舎に行ってみない?」


私は、旧校舎のうわさを聞いた直後だったため正直怖くて行きたくなかったのですが、七海の前で虚勢を張ってしまい、


「いいよ。怖くなっても助けないからねww」


などと言って約束してしまいました。


今週の金曜、その日が来るのをブルブルと震えながら迎えました。


「ねぇ、今日は13日の金曜日だね」


怖がっていると知られたら馬鹿にされると思い、そんな話をしながら旧校舎に足を踏み入れました。


その日は夏休みだったので外はものすごく暑かったのですが、一歩足を踏み入れると寒いと感じました。


私は怖くなり、隣の七海にしがみつこうとしました。


しかし、そこに彼女はいません。


「七海~、七海っ~‼ どこに行ったの~‼」


大きな声で叫びますが、音がどこまでもどこまでも反響して聞こえます。


まるで、奈落の底に落ちたかのような気分です。


とにかく一度出ようとしますが、ドアは先ほどまで開け放たれていたにも関わらず、私の目の前で音もたてずに閉じていきます。


動こうとしても、体が張り付いたかのように一歩も動けません。


扉が閉まり切った瞬間、力が抜けるようにその場に座り込んでしまいました。


どこからか歌が聞こえてきます


 


 ♪~旧校舎の床は水没しています。


  皆さんは知っていますか?境界。


  境界は此岸と彼岸・・・二つの岸辺をつなぐ海


  そこは行く当てのない死者と、怪異と、だれからも忘れられたモノたちの世界・・・


  あなたは戻れる?あなたは戻れる?~♪




そしてその歌に混ざってこんな囁き声も聞こえてきます。


 


 ~誰か来たの。


  人間ってのは懲りないな、俺たち怪異にちょっかいを出すからこうなるんだ


  さぁどうする?さぁ、どうする?


  泣いてわめく?うるさいな 一口で食べてあげる


  戦意の喪失? そうか、じゃあ、この地で朽ちるといい


  さぁ、どうする?


  水を探そう。


  清めの水


  この校舎で唯一、水の出る水道・・・


  さぁ、見つけられる?


  俺たちを清めてくれる水


  俺たちを彼岸へと導く水・・・


  さぁ、動け!動け!


  己の命をささげてでも我々を導く水を探せ!~




「み・・ず・・。みず。水を探せばいいのね」


「それで私の命は助かるの?」


誰も答えてはくれません。


歩き出す少女


その後ろにふっと現れる人影


彼は、彼女の後姿にこう囁きます。


 


 ~歩くしか道はないのでしょうか?


  それならば歩き続けましょう。


  命が尽きるまで


  水を見つけるまで


  私の身を、あなたの身を清めてくれる水を


  私を癒す水を


  水道を探す


  特別な、大切な水道


  きれいな水道 輝く水道


  きっと きっと あなたは見つけられると信じて?~

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る