慘残
惨憺な景は、俺の魂を深く揺さぶり、涙誘し。
奇態、自転でも逆に成ったか?
心傷に隠れ住み、一層悲惨と呼ぶべき傷をさらに悪化させ、病院の連中は無能の極み、俺ほど命を重荷と感じつつ歩む者はおるまい。
彼女がこの世を去りし時より、万象は冷酷に、虚空のごとく俺の眼前に広がりぬ。
彼女との約束は白紙となり、何の因果か虚無の時を一層長引かせる運命を背負わされた。
往年の友人や初恋の面影は、今やこの場には存在せず、俺はどうするべきか。
右前に左前に虚無へと向かい続け、果てには死すらも望んだが、突如として転機が訪れた。
「死を求むるなら、俺に授けてはみぬか?」
突如として悪魔が姿を現し、闇の中にその影を落とした。そして、じっとりとした視線を俺に向け、暗闇からの誘いを感じさせる。
「どうせ俺の命も碌に活かそうとは企てすらしないのだろう。その誘いに対して、決して同意することはありはしない。」
「お前の命を賭けの材料としようと思うのだ。その代償として、来世を確定させてやる。」
蠱惑的な雰囲気に呑まれそうになり、心は暗い魅力の渦に飲み込まれつつある。足元は安定を欠き、無限の深淵へと続く道は揺れ動く。周囲の色彩は異様に鮮やかで、無数の影が微笑みかけるが、その裏には不安が潜んでいる。この誘惑の海に身を投じれば、理性の錨は容易に外れ、思考は甘美な幻影に惑わされてしまう。果たして、真実の所在はどこにあるのか、私の足場は揺らぎ、身動きが取れなくなっていく。
「天使との運命的な賭けに他ならぬ。その賭けにおいて、お前の命という希少な財をもって代償とするのだ。無垢なる者との交わりがもたらす甘美な誘惑、その影には常に深淵の影が潜む。果たして、その選択がもたらすものは、祝福の光か、それとも奈落の苦悩か。さあ、選ぶがよい、運命の糸を手繰り寄せるために。」
難解な問いに直面し、俺は静かに了承した。生を享受するも、心には虚無感のみが広がる。この無意味な存在の中で、果たして何を求めるべきなのか、思索は彷徨い、深淵に堕ちていく。生命の織りなす脆い糸の向こう側に、希望の光は一瞬の閃光に過ぎず、現実の闇が覆い被さる。虚無に満ちたこの世界で、我が心の声は無に帰し、ただ流されるままに、時を過ごす他に道はないのだ。
「良いだろう、しかし、来世の確実性を本当に担保できるのか?もしそれが可能であるのなら、来世においては人間として生を享受させてくれ。それもまた、富の恵みを授けられた者として、贅を尽くした生活を送ることができるように」と、俺は問いかける。その言葉の背後には、無限の欲望と未来への期待が交錯し、運命の渦に身を委ねる覚悟があった。果たして、目の前の選択は、真の幸福をもたらすのか、それともさらなる虚無へと繋がるのか。「ふはははは!さあ、承知したぞ!貴様の命を我が手中に駒とし収めよう!」その声は、闇の中で響き渡り、欲望の渦巻く空間を満たしていく。言葉の背後には、狂気じみた歓喜が滲み出し、命の重さを軽々と打ち捨てるかのように。果たして、その選択が運命にどのような影響を及ぼすのか、何者にも止められぬ力が、静かに幕を開けようとしていた。目が覚めると、知らぬ天井が眼前を覆っていた。その表面は無機質な白に染まり、時折陰影が揺らめく様は、まるで夢と現実の狭間に囚われたかのようだ。周囲の静寂は、異様な緊張感を孕み、心の奥に潜む不安が静かに蠢いている。果たして、この場に何が待ち受けているのか、未知なる運命が手招きをしているかのように感じられた。安息の感覚は消え去り、脳裏には無数の疑問が渦巻く。ここはどこなのか、何故自分がここにいるのか、その問いは、闇に沈むように深く響いていた。多分、俺は死を迎えたのだろう。そして今、かつての自分とは異なる存在へと生まれ変わったのだ。この不確かな実感の中で、全く新たな自己が目覚める様は、まるで夢の如き幻想の中に沈んでいるかのようだ。意識の奥底から沸き起こる疑念は、今ここに立つこの存在の正体を問いただし、過去の記憶と新たな現実との狭間で揺れ動く。果たして、この新たな自分は何を成し遂げるべきなのか、また何を失ったのか。虚無と再生の交錯する中で、運命の糸が再び紡がれようとしている。「誰かいないのか!?誰かー!!」声を張り上げるも、空虚な音はただ虚空に響き渡るばかり。その静寂は、まるで圧迫するように、周囲の空気を凍りつかせている。人の気配は微塵も感じられず、まるで自分だけがこの無限の白に取り残されたかのようだ。耳を澄ませば、呼びかけた声が反響するのみで、何の応答もないこの場の冷たさが、心の奥深くに静かな恐怖を宿す。果たして、この静寂は何を意味するのか、無限の孤独が俺を包み込み、やがてその闇に飲み込まれようとしていた。それから数ヶ月の時が流れ、虚無を堪能し尽くした今、もはや暇人と呼ぶにはあまりにも多忙を極めていると感じさせられる。無限の空白は、思考を絡め取る呪縛となり、時間の流れはまるで泥に沈むかの如く重く、遅々として進まない。虚無の中で生まれる忙しさは、存在の実感を与える一方で、何かが満たされることはない。心の奥底に眠る虚無の影が、常に自らを責め立て、無意味な活動に没頭せざるを得ない状況を作り出していた。果たして、この忙しさは何を意味するのか、無為に過ごすことが真の苦悩なのか、それとも新たな道を切り開く契機となるのか、答えは依然として闇の中に埋もれている。心が停止する瞬間は、思いのほか早く訪れた。まるで時の流れが歪み、一瞬のうちにすべてが終焉へと収束していくかのようだ。その瞬間、冷たい静寂が全身を包み込み、鼓動の音が次第に遠のいていく。生命の終わりは、予兆を与えることなく突然に訪れ、無限の虚無がその後を追いかける。果たして、その停止は逃れ得ぬ運命であったのか、それとも一瞬の偶然に過ぎぬのか。時間が凍りついたかのような感覚の中で、全ては沈黙し、無に帰していく。
後ろから迫り来る闇、それは無音の波のように忍び寄り、気づくことさえ困難なほどに密やかだ。意識の狭間で漂う者は、その存在に気づかぬまま、無意識の底で目覚めを模索し始める。まるで、赤子が初めてこの世界に抗うかのごとく、無防備な姿で必死にもがくが、そのもがきすらまた、闇に吸い込まれそうなほどに脆い。何かにしがみつこうとする意志が渦巻くが、すべては深淵に向かう川の流れに飲み込まれ、解答のない問いの中で彷徨う。果たして、この闇の先に待ち受けるのは終わりか、あるいはまた新たな目覚めか、それすらも定かではないまま、ただ抗い続けるだけだ。徒然なるままに、時の流れは無秩序に過ぎ去り、気づけば私は静寂に包まれた近所の公園に、ただひとり突っ立っていた。まるで時間そのものが曖昧な夢の中に溶け込んでしまったかのように、意識の縁は薄れていく。微かな風が木々を揺らし、足元の影は長く伸びているが、それすらも現実感を伴わぬ幻影に過ぎない。過去と現在、夢と現実、その境界はもはや曖昧で、私はただ、この場に立ち尽くすことを余儀なくされていた。果たして、何が私をここに導いたのか、その答えは風の囁きの中に溶けて消えていく。「生まれ変わった…?ここから、俺の人生は再び始まるというのか」男は、自らに問いかけながらも、心に定まることのない目標へと引き寄せられ、ふらつく足取りでゆらゆらと歩き出した。足元を照らす光は不確かで、虚ろな影が伸びたり縮んだりするかの如く、目的地は曖昧な彼方に霞んでいる。新たな始まりを告げる運命の歯車は回り始めたが、その先に待つものは栄光なのか、それとも無限の虚無なのか、未だ答えは風に流れて消えていく。歩みは頼りなくとも、何かに導かれるように男は進み続け、未来という名の不可視の海へと身を投じていった。
戒想
彼女は死んだ。彼女の親は新興宗教に殉じ、その狂気の言仰に彼女を無理やり従わせた。自由への渇望は彼女にとっては手の届かぬ幻想であり、その心を蝕む現実に耐え切れず、彼女は自ら命を絶った。それにもかかわらず、親たちは彼女の死に一切の関心を示すことなく、まるで天命に従うかのごとく、空虚な目標へと向かい、背後を一度も振り返ることなく歩み続けた。彼らは何処へともなく進み、ただ定められた道筋に盲目的に従っていった。
一方で、俺の両親もまた、古くからネグレクトを続け、俺はその影響で心が病んでいた。しかし、この状況に出口は見えず、親たちは何一つ変わろうとせず、己の無関心に浸り続けた。解決の糸口は遥か彼方に消え去り、地元に頼るべき何ものも存在しないと云う現実が、無力感をさらに増幅させていくのだった。孤独と苦悩が交差するこの世界において、希望という名の光はどこにも見当たらない。俺は再び、新たなる人生の道を歩み始めるのだろう。その一角にて、宗教という名の果てしなき迷宮に向かい、その赦しを求める旅を続ける運命にある。信仰と狂気の狭間を彷徨い、かつての束縛と絶望の残滓を背負いながらも、真理を掴もうとする手は、虚空に向かって伸ばされる。赦しとは、果たして他者のために与えるものか、それとも己の解放のために必要なのか。その問いは未だ闇の中に沈み、答えを待つことなく時間は流れ続けるだろう。
いえに死ぬ
悲哀終章瓦解躁鬱学 谷海ハマ @drrrrua
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