第2話

冬の朝6:10。まだ少し暗い中、駅に向かっていそいそと歩みを進める。


いつもなら6:35の電車に乗れば間に合うが、今日は当直。その日の部隊編成の責任者であり、朝から方面本部やら幹部への報告があるので1本早く行かざるを得ない。


「頼むから誰も飛込まないでくれよ。」


不安が思わず口から出る。


飛込みとは、予定外に人が休むこと。基本的に前の当番中に休暇予定や行事予定を確認して部隊編成をしているが、体調不良や身内の不幸等で予定外の休暇が入るとそれが崩れる。場合によっては毎日勤務の人に泊まり勤務をお願いしたり、予定休の人を呼び出す羽目になる。それらの連絡や調整を、基本的に全部当直が行う。


「30そこそこの士長がやることじゃねえと思うんやけどなあ。」


また独り言が出てしまう。俺の属する消防本部では消防士長が当直業務の大部分を担う。1つ上の階級の司令補の当直もいるが、基本的に飾り。ほとんどは当直士長に任される。消防士長になって2年。だいぶ慣れてきたとは言え、やはり気が重い。


そうこうしているうちに最寄駅に到着。月曜の朝だけあって、心なしか空気が重い気がする。皆気持ちは同じか。


程なくして到着した電車に乗り込み、空いてる席に腰を滑り込ませる。始発から4駅目のこの駅では、座れるかは運次第。座れたってことは、今日はまずまずの運ってことか(笑)


署まで約1時間半の旅。長い勤務に備えて少し寝るか。あー頼む、平和に終わりますように。


祈るような気持ちで束の間の眠りに落ちていった。


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「解説・消防士の階級」

消防総監 東京消防庁のトップ。警視総監

と違って大した権力はないが、

総監という名前のせいで勘違い

している職員が多い。


消防司監 政令指定都市または管轄人口70

万人以上の消防のトップ、東京

消防庁次長、理事、部長


消防正監 消防職員数200人以上の消防の

トップ、政令指定都市部長、東

京消防長部長、消防学校長、

方面本部長


消防監 管轄人口10万または消防職員

100人以上の消防のトップ、東

京消防長参事、署長

消防司令長 消防職員100人未満の消防のト

ップ、東京消防副参事、課長


消防司令 大隊長、課長補佐、係長

消防司令補 中・小隊長、主任

消防士長 小隊長、隊員、副主任。

○○士長と呼ばれる

消防副士長 隊員(設けられてない本部も多

い)

消防士 隊員、入って2~5年ぐらいま

で。本部による。


現場に出られるのは司令まで。現場に出られる司令の枠は概ね各部1人なので、優秀でも現場好きな人は、敢えて司令補や士長にとどまっている人も多い。

結果として試験勉強好き、上司にゴマをすれる人間ばかり偉くなることが多く、それが上層部と現場の乖離を生んでいるとも言える。





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