消防署日記

@Cowbook

第1話

ピピピ…ピピピ…午前6時。4日ぶりのアラーム。


月曜かぁ。3週間に1度、世間のサラリーマンの気持ちが分かる瞬間。のそのそと起き上がる。


「あ!今日当直じゃねぇか!1本早いの乗らないと。」


慌てて顔を洗う。朝飯は諦めるか…そのまま歯を磨く。慌ただしくスーツに着替え、リュックに救急服を詰め込む。持って帰りたくなかったけど、前の当番中は出場続きで洗濯できなかったからなぁ…ま、今日も救急やけど。


「さぁ、行くか。」


おっとその前に…まだ夢の中の妻の寝顔を見に行く。


「いってきます。」


静かに声をかけ寝室を出ようとすると、


「いってらっ…ふぁ…い。無事カエ…」


寝ぼけた妻の声。また起こしちゃったか。起こしたくなかったら声をかけるなと言う話だが、それをやると怒る。いってらっしゃいは絶対言うんだと結婚した時に宣言し、それを守りたいから出る時は声かけてねと釘を刺されている。


「無事帰ってくるか分からない仕事でしょ?」


まあそうかもしれんけど大げさな…と思いつつ感謝している。


「はいはい、無事カエルからね(笑)」


再び夢の中に旅立つ妻に、2人の間でお決まりのセリフを言い寝室を出る。



これは超人でもヒーローでもない。等身大の消防士のお話。

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