第4話  人間になりたい

ユリアは「何が物足りないな」と心の中で思っていた。

ナツメが「ユリア、最近、どうしたの?私達に会えたのに溜息ばかりで」とユリアを心配して話し掛けた。

ユリアが「あの子が居ないんだもの。どうしても会いたい」と涙を流していた。

ナツメが「あの子って誰?」とユリアに聞くと、ユリアが「誰だったっけ?名前が出てこない」と頭を抱えていた。

ルルージュが「皆さん。天使としての自覚が足りませんよ。ユリアさん、人間にうつつを抜かして居ると人間に愛を運ぶ天使にはなれませんよ」と注意を受けた。

ユリアが「ごめんなさい。でも私、あの人に会いたい」とルルージュに頼み込んだ。

ルルージュは「良いですか?人間界での記憶はあまり、残っていません。なので天使としての役目は果たしていただかなければなりません」とユリアに厳しくした。

ナツメが「そうよ。先生【上流階級の天使】の言う通りよ。人間なんて天使の存在すら気にして居なくて、忘れて居るものよ。それより人間の幸せの橋渡しをしなくちゃね?天使になったんだから」とユリアに笑顔を向けた。

ユリアは「そんな事分かって居るけど」と何故か不満そうな顔をして居た。

ナツメが「そうと決まれば、人間界で人間を幸せにしなくちゃいけないな」と張り切って外へと出て行った。

ユリアはこっそり、このエンジェリックウォールを抜け出そうと心の中で思っていた。

その晩にユリアは、エンジェリックウォール修練場を抜け出し、人間界へと帰って来た。

ユリアは「此処の人間界は、人間が生き生きと楽しく生きて居て、楽しそうだな」と空高く飛び回り、周りを伺っていた。

ユリアは、公園のベンチに座って外の景色を見て居るマヒロを見つけた。

ユリアは「マヒロ君、久しぶり」とマヒロの目を手で隠した。

マヒロが後ろを振り返り、「うわ。ユリアさんか?驚いたよ」と身体をビクッとさせた。

ユリアが「さっきね?エンジェリックウォール修練場って言う天使にしか入れない世界から、人間界に帰って来たの。どうしてもマヒロ君に会いたくて」と嬉しそうにしていた。

マヒロが「そんな大切な場所を出て来て大丈夫だったのかい?」と思わず聞き返した。

ユリアが「もう、良いの。あんな人間の事を知らないわからずやな場所を出て来て正解だったよ」とマヒロに笑顔を見せた。

マヒロが「それは良いけど、僕は一人暮らしだし女性1人を泊めるなんて危ないだろう?それに、エンジェリックウォール修練場の皆だってユリアが居なくなって心配をしているだろうし」と凄くしどろもどろして居た。

ユリアが「良いの。その事は私も忘れたいから」とマヒロに銘打って出て来た理由を言い、マヒロの家に入って行った。

そこには物影に隠れて見て居たナツメが「大変だ。ユリアは、あのマヒロに夢中なんだ」と思わず戸惑って居た。

ナツメが外にいるユリアに「ね?ユリア。どうしてあのマヒロって子を選んだの?私達よりもそんなに大切なの?」と話し掛けた。

ユリアは「私はマヒロ君と一緒に居たいから、もう決めた事なの。人間として暮らすよ」とナツメを説得させた。

ナツメが「そう。そんなにあのマヒロって子がいいなら、勝手にすれば良いわ。何があっても知らないからね」と遠くのエンジェリックウォールまで戻って行った。

マヒロが「なんか大きな声が聞こえて来たけど、何だったんだ?」とユリアに尋ねた。

ユリアは「あぁ、何でも無いよ。気にしないで」とマヒロの家に入って行った。

ルルージュが「ユリアがあのマヒロって子と一緒に居るなら、仕方ありませんね。この際、人間として生きていかせましょう」とユリアの羽を背中から消した。

こうして、ユリアはエンジェリックウォールの記憶を失くし、人間として新たに生まれ変わりユリアは、マヒロと一緒に暮らすことになった。

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