第5話

バックからリップを取り出して塗った。





あなたがバスルームから出て来る。

そのまま、真っ直ぐ私へ向かって来る。




ひょいと私を抱えるからびっくりして声が出てしまう。


おかしそうに笑うあなたは機嫌がいい。


ベットにふわり降ろされて、また視線が絡む。



ああ、甘い。

あなたの目に私がうつってる…


ふたりっきりのこの部屋。

ふたりだけの時間。


この瞬間だけは、私だけのあなた、だよね?






ちゅ




ーはじまりの合図ー





キスなんて、しらない。

これは、はじまりの合図。






少しだけ、ただ唇を合わせるだけの合図のあと、また視線が絡む。



ふっと微笑んだあなたが綺麗で、好きで。

私も微笑む。



あっという間におろしたてのワンピースは剥ぎ取られた。


可愛いって1ミリでも思いましたか?


そもそも見てないか、服なんて。

こうやって一瞬で剥ぎ取られるんだもん。




そんなこと考えながら

あなたが与える快感に身を捩らせて声を上げる。




ー好きー



死ぬほどそう思うのに、間違っても口をついて出てきたりはしない。


出来ない。








"腰が浮いてきたね"



ひとりごとみたいに言って、私が悦ぶところを攻めたてる。




あたたかい


私に触れる手も胸板も全部あたたかい

嘘じゃない


このあたたかさだけは嘘じゃない。




ねぇ、また唇を合わせてくれないかなあ

もっとぎゅっと、息もできないくらいに締め付けて

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