愛はハデスの狭間で踊る
君の愛した自然律らは、その夢の中でさえ確かなものとなることはなく、やはりこの世の無常と虚像の真理に根ざすならば、僕らの柔らかな翼でさえ、無縁となるのであろう。それでもと求める愛や信仰らは、僕らヒト科の生きる希望となるが、さしずめ、物質世界に根ざした欲や柵によってヒトは生を選ぶのだ。
流す記憶のために、揺蕩うような人生を生きてみるのも悪くはないのかもしれないが、それでもとやめるのは、やはり生きたいと強く思う心根から。だから、僕らは愛を求めてやまない。病まずにはいられまい。
遠い昔、遠い記憶の中で、微笑んでいた、泣いていた君も僕も、全ての命が還える場所から生まれた日にも、眠らずに幾夜を越えた先に見た景色も、なにもかも、悪いことなどなく、罪も罰も、神ではない、ヒト科が作る幻影と散る。蘇る街の園から馬車が発つ。旅の始まりのような眠りから目覚める時、神は安堵して、無邪気に、愚者のように、この世界の隠された秘密たちを想っては夜空の星を眺めるであろう。
愛は愛で、愛のまま、死とハデスの狭間で踊る。僕らは生きることをやめられず、愛し愛され生きていく。縁とするのは涅槃真理や死の至福ではなく、むしろいつだって僕らが抱くのは生への渇望なのだ。
「嗚呼、あなたはなんて悟っているのでしょう」
終末の狭間で私は泣いた。凪いだ渚のように。
この人生に意味などない。だからこそ、求めるのは生まれた意味なのではないか。宇宙の謎、人生の秘密、命の仕組み、この世の真理や摂理にあなたの目が開かれた日にはもう! 僕もあなたも神や仏となって、生まれるのも死ぬのも、全て解ってしまった僕らには、世界はただ認識と歓喜であった。
愛よ、幻想でも僕はいい。
明日死ぬとしても、ニヒリズムだとしても、それでも尚絆つのは、どうしようもなく甘く、切なく、儚い、愛であった。
信じる力よ、僕らの愛を永久にせよ。
信じる力を、忘れてたまるか、繰り返せ。
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