第2話 魔導書『死霊組成』
そしてこの魔導書は自ら後継者を選ぶと言われている。何故か薬師寺一族が魔導書に気に入られており、その中でも僕がこの魔導書に選ばれて受け継ぐ事になったのだ。
魔導書に選ばれなかった父はとても残念そうにしていた。一族の者でこの魔導書に憧れない者は居ない。
この魔導書は後継者に至高の叡智と財を与える代わりにある見返りを要求する。それは異界から召喚した生き物全般だ。
大体が魔物と呼ばれている化け物だが、たまに人形の生き物も居るという。それは倫理的にどうなんだろう、大丈夫なのだろうか……
まあお祖父ちゃん曰く、「召喚しても直ぐに、本が吸収してしまうから気にする事はない」との事だが、気になるものはきになる。
お祖父ちゃんも死ぬまでの残り僅かな時間で、僕のためにこの魔導書の簡略化に成功している。
お祖父ちゃんのおかげでちんぷんかんぷんだった魔導書が、僕でも理解する事が出来るのだ。
ありがとうお祖父ちゃん。そして安らかに眠ってくれ……
僕はやく8年をかけて魔導書を第7巻まで読み進めている。お祖父ちゃん曰く、『清司はまだ幼いから、魔導書に慣れる為に時間をかけて読むのじゃ』との事。
これから8巻を読み始めるつもりだ。読む前にお祖父ちゃんのレクチャーがあった為、大体の流れは掴めている。
まず最初に僕が始めたのが、身を守る防御系の呪文や魔導具の装備。
柔道や空手などを護身術程度にはお祖父ちゃんから教わっていたが、それでも防御系の魔導具は必須だと言っていた。
素材はお祖父ちゃんが財産の殆どを使い集めてあるため問題はない。だが今の段階で僕が作れる魔導具では心許ないので、お祖父ちゃんが作ったと云う魔導具を装備している。
特に悪意感知の"ジャッジ''と、悪意返しの"カウンター.マリス''は必ず身に付けて居ろといわれた。そのため外出する際は必ず付ける様にしている。
因みにこの2つの魔導具は、お祖父ちゃんが作った魔導具の中でも極めて性能の高い魔導具だ。
魔道具の形もピアスだったりネックレスだったりで、現代での使用も憚らない物。
攻撃系の魔道具は僕にはまだ早いという事かブロックがかかっており、今の僕では作る事が出来ない。
まあ平和な日本に暮らしている限り必要とは思えないのでよしとしておこう。
魔導書の内容は多岐に渡る。
大小様々な召喚陣の描き方や、はてまた錬金術。大小召喚術、生者や死体の魂や骨から肉体を組成する秘術なども存在するため、身を守る術は必須なのだ。
特に死者の組成にはしっかりとした準備と心構えが必要だ。
組成といっても死者を生き返らせる訳ではなく、魂と肉体を変質させて、全く別の上位個体として蘇らせるというちょっとヤバめな内容。
この組成には生者、死者の魂と骨格一式が必要。だが骨格は他の物でも代用できる。他の動物や魔物の骨、組成者と相性の良い元素属性などで代用出来る。
その場合は頭の横に口があったり、足や腕が多めに生えていたり、四肢の肥大化などの障害や、組成者の元と成った元素属性への自在な変化などが見られる。
薬品や魔道具で足りない骨格の生成も可能だが、その為の素材が異次元に住む魔物の肝臓だったり、古代人のミイラの粉末だったりと入手が困難なものばかり。
そして蘇りし組成者には定期的に肉体の元となった成分を食料として与えなくてはならない。
例えば骨だけの純粋な組成の場合、元となった生物の血肉を必要とする。元が元素属性だった場合はその元素を与えなければならない。
死霊組成を行うのに魔導具も呪文も必要無い。必要なのは魔導書『死霊組成』と所有者、対象の魂と骨格などの材料のみ。
全巻読み終えた際に使える様になる魔導書の奥義、『展開魔法陣.万物流転』で開かれた世界"All things in the world''では、全ての物質と元素がアムリタと共に存在し、素材さえあれば自由に造り替える事が出来る。
そしてこの世界には魔導書の所有者の僕と、組成の対象と成る者しか入る事が出来ない。
死んだお祖父ちゃんの話しでは、『生き返らせるのに慣れるまでは知能の低い動物だけにしろ』との事。
この''死霊組成''の術で組成された生物はリミッターが外れており、魂の格が上がる事で以前を遥かに上回る力を有する。
そしてその力も生前のステータスにより上下する。
組成者は以前の記憶を有しており、死霊組成を行った術者に完全服従する様だ。その点は安心だね。
だが成功率は20%程だが、服従の楔から解き放つ事も出来る。それにはある魔導具が必要なのだが、その魔導具を使う事で成功率を90%まで上げる事は出来るだしい。
だがその材料がエンシェントドラゴンの目玉という有り得ない物なのだ……
流石のお祖父ちゃんもこの素材は持っていなかった。ていうかエンシェントドラゴンさんて本当に居るんだね。
"死霊組成''の秘術は全般的に色々と危険そうだが、極める価値は充分にありそうだ。
魔導書も今の所は小動物の生贄で満足しているので、中〜大規模な召喚は試した事はない。
それらの行為は第8巻を読んでからでも遅くは無いだろう。
それでもお祖父ちゃん曰く『魔導書は我儘で、時と共に生贄の質と量も上がる。だからお前もそれに合わせて力を付けなくてはならない』との事。
生贄を与える頻度は3〜4日に一回、量も小動物程度で今は保っている。
だが魔導書の力を使えば使う程にその間隔も短くなって行き、量もそれと並行して増えていくとお祖父ちゃんは言っていた。
魔導書に生贄を与えなければどうなるか、まあ大体の想像は出来る。決して良い結果で無いことは確実だろう。
今は後の苦労の為に、魔導書の秘術をいつでも扱える様になる事が肝心だ。
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