第22話 みんなでの登校

 瑠李に腕に巻きつかれたり、それを丁寧に引き離したり、攻防を繰り広げながら学校へ向かっていると薄茶色の髪の毛を立てた爽やかな少年から声がかかる。


「優樹、リュティさん、おはー」


「あ、和也くん。おはよう」

「おは」ペコッ


「あれ?2人は知り合いだった?」

 瑠李と和也の顔を交互に見て、どちらにとも言わず疑問を投げかける。


「いや、話したことはないけど、最近クラスにもよく来るし、そもそも学校で有名だし」


「同じく。伊達の弟くんは2年の中でも話題……らしい」


「伊達?」


「いや、それはこっちの話だよ。お兄さんの聖さんのこと」

「そ。」


「話したことないなら紹介するね。和也くん、こちらがるり姉。るり姉、こちらが和也くん。唯一の友だちだよ。お世話になってる」


「寂しいことを当たり前みたいに言うなって。橘花和也です。3年にいる伊達の弟です」


「リュティ瑠李。よろしく」


 瑠李は普段から口数は多くない。さらに異性に対しては拒絶はしていないが、ほぼ自ら話すことはない。

 異性との会話が苦手なことを察した和也は優樹を挟んで瑠李と反対側に位置取って、共に学校へ向かう。こういう気遣いが自然とできるのは流石だな、と優樹は思う。



「しかし、義姉弟がいるって聞いてはいたけど、マジかぁ。憧れのシチュエーションだわ。こんな可愛い義姉がいるなんて」


「あはは。僕もビックリな再会だったよ。しかもすぐに昔みたいに仲良くなれたし」

「…………」


「傍目から見ると義姉弟の距離感より、もっと親密な感じに見えるな。雰囲気も何か似ててお似合いだしな」


「……この子良い子」



 瑠李が和也に心を開きかける交流をしていた時に、また別の声が聞こえる。


「和!おはよ!あ、優樹くんも瑠李ちゃんもおはよ!」


 ピンク色の髪の毛をバイトの時と違いハーフアップにした綾だった。艶のある髪の毛は色合いも相まって春に似合う。


「あ、あや……おはよ」

「綾さん、おはようございます」

「やほ」


 普段と違う様子の和也を不思議に思う優樹だが、一先ず昨日のお礼を言う。


「昨日はありがとうございました。色々と優しく説明して下さって安心しました」


「え!優樹、バイト面接って『文』だったのかよ」


「そうだよ。今度の日曜日から働かせてもらうことになったよ」


「うふふ、そうなの。これからよろしくね」


「え!あ、あやに言ったろ。高校入ったらおれが手伝うって」


「いや、和はサッカーを一番に頑張ってよ。今度も応援行くからさ」


「お、おう。なら頑張るわ」


「ふふ、聖くんも喜ぶんじゃない?」


「……あいつは別にいいよ」



 瑠李は優樹の服の袖をくいくいと引く。

「ユウ。ユウのコーヒー飲み行く」


「や、まだコーヒーを淹れるのは当分しないと思うよ。とにかくまずは仕事を色々覚えなきゃ」



 学校に近づいてくると「おはようございます」という爽やかな声が響いていた。今日は副会長の挨拶運動をしているようだ。


「あれ?聖くん、今日はしない予定だったのに……そしたら挨拶運動に行ってくるね」


 小走りで聖の方にかけていく綾。顔は満面の笑みを浮かべていた。

 それを鋭い眼差しで見つめる和也。


「和也くん、今日さ、部活後にサロンに来てよ。ちょっと膝周りの触診をさせて欲しいんだ」


「……へへ、優樹は相変わらず優しいな」


 表情を一変させて微笑む。こういう気遣いが自然とできるのは流石だな、と和也は思う。







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