第15話 義姉はベッドで気持ち良いことを所望する
優樹は手に持った本を番号順になるよう本棚へ戻す。
「これで終わり。あとは鍵を返しながら帰るだけ」
初めての図書委員としての仕事が終わった。意外にも瑠李の教え方は丁寧であり、テスト期間でもない今はやることも少なかったため優樹はこれなら大丈夫そうだと一安心する。
瑠李は「うーん」と伸びすると肩をぐるぐるまわす。
「さ、ユウ帰るよ」
当然の様にピタッと横にくっつく瑠李に苦笑をしながら優樹は頷く。
「るり姉はこの後時間あるかな?大分首が痛そうだから、どこかで頚部のマッサージをしても良いかな?」
瑠李は目をキラキラさせながらも首を横にふる。
「ユウも初めての図書委員や…………図書委員で疲れてる」
今日の騒ぎのことを心配してくれてるのが伝わった優樹は敢えて意地悪な顔で言う。
「お気遣いありがとう。るり姉が爆弾発言をしなかったら疲れは半分だったよ」
「ぅ!…………でも事実を伝えた」
表情の乏しい顔だが明らかに目が泳いでいるのを見て、優樹はふっと笑顔に表情を変える。
「でも、本当に図書委員の仕事も分かりやすかったし、シフトを調整する職権濫用も嬉しかったからお礼をさせて欲しいな」
「うー姉を手玉にとるのズルい」と瑠李はジト目になり、小声でつぶやく。そして、おほんっと咳払いを一つすると表情を戻して言う。
「そこまで言うならお礼を受け取らなくもない」
「ありがとう!そしたらベッドがあるとこが良いなぁ……」
「ベッド!ベッドで気持ち良いこと!じゃうち来る?」
優樹は暴走しそうな瑠李に苦笑いで待ったをかける。
「るり姉、変な言い方しない。母さんにもたまに会ってたなら、サロンでも良いかな?」
「営業時間中。良いの?」
「大丈夫だよ!その後少し歩くけど、うちでご飯食べて行かない?一人暮らしだと準備大変じゃない?」
「最近はスマホ一つでご飯届く。大丈夫」
「お店には勝てないけど、栄養のこともあるし食べていってよ」
「主夫の鏡!将来も期待できる」
優樹が冗談めかして、にぱっと笑いながら「養ってくれるならアリか」と言うと、瑠李は首がもげるかと思うほど縦に首を振り続ける。
首がさらに痛むことを心配して止めると瑠李はうらめしそうにつぶやく。
「ユウ、前髪切るの絶対ダメ。欠点なくなる」
「え!これ欠点だったの⁉︎本音がポロポロもれてるよ!絶対切らなきゃ」
スマホ片手に「高校生になったし美容室デビューをしてみるか?」と美容室を探しはじめる。
それを阻止しようとピョンピョン跳ねてスマホを強奪しようとする瑠李。
そんな仲睦まじい光景を繰り広げながら歩く二人。
サッカー部の練習が終わりグラウンドから部室に戻る途中でその光景を見た和也は“噂を沈静化させる気ないだろ”と心の中でツッコミを入れる。
同時に周囲の視線と関係なく動ける優樹に改めて敬意を払う。
容姿や能力のため常に周囲の期待を受けて“橘花和也”を求められてきた。
「アイツも優樹みたいな友人を作ることが出来たら……」
和也は誰に言うでもなくつぶやく。それは春の夕暮れにとけていく。
————————————————
次回予告
次回は後頭下筋群、胸鎖乳突筋、肩甲挙筋辺りをほぐします。
肩こりや頚性頭痛、ストレートネックの方は姿勢に気をつけてぜひお読みくださいね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます