第13話 和也と優樹は役者になれない
「おはよっす!女たらしのユウキくん♪」
優樹が登校して下駄箱で靴をかえている時だ。なかなかの大きな声でなかなか失礼な挨拶が聞こえた。
振り向くと和也がにんまりした顔で優樹を見ていた。
朝の一番生徒が集まる昇降口だ。クラス関係なく多くの生徒が和也と優樹を注目する。
「おはよ、和也くん。朝イチから散々な言われようだね」
「仕方ないだろ。みんな優樹と話さないんだから、代表しておれが聞くしかないだろ?」
和也と目が合うと少し真剣な表情となり、僅かに頷く。その様子から意図を汲み取った優樹はいつもより大きな声で話す。
「まさか街に出てまで噂になるとは思わなかったよ」
「まぁあの子たちはファンも多いからな」
「たち?」
「?……そっか、まだ学校じゃ会ってないのか」
「?」
「何でもない。とにかく“女たらし”で有名になっちゃったぞ」
「女たらしって、友だちの3人中2人が女の子ってだけだよ。分母の小ささを知ってたら“たらし”にはならないでしょ」
「まぁクラスでもずっと静かに難しい本読んでるし、まだ分母3だもんなぁ。次の1人で75%か50%に変わるくらいだからなぁ」
まぁでも、と和也はからかう顔になりながら言う
「優樹はさ、多分女の子の割合が増えていくよ。多分天然の“たらし”だと思うわ」
男の優樹でも見惚れるくらいの笑顔を和也が見せたところで予鈴がなる。
やりとりを見ていた生徒たちも散り散りに教室へ向かっていく。
「優樹、ごめんな」
「や、和也くんが率先してイジってくれたのはコソコソ噂されるよりありがたいよ」
「意図を汲んで助かった。どう悪役になって、どう弁解しようか迷ってた」
「まぁ声も変に大きかったし、友だちいないアピールも説明口調だったけどね」
「役者にはなれないな」
2人で笑いながら教室を目指す。優樹はそれが心地良かった。
「で、実際恋愛としてはどうなんだ?」
「いや、前も言ったように恋愛には期待してないし、そもそも恋愛ってよく分かんないよ」
「そんなもん相手が教えてくれるよ。その子を想って“わー”って走りたくなったり、“わーわー”泣きたくなったり、相手が自然としたいことを教えてくれる」
「さすが和也くんだね」
「おれは自他共に認める“たらし”だからな」
「あはは、確かに人たらしだ」
ちょうど教室に着き、クラスの中心の和也はみんなへ挨拶しながら教室に入っていく。「おーい!噂の中心人物、女たらしの優樹が来たぞー」とおどけた声が聞こえる。
今度は役者になれるかな、と優樹は苦笑いしながら教室に入る。
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⭐︎あとがき
いただいたコメントから着想を得た話です。本当にコメントは有難いなと実感しました。
ぜひコメントを残していただければと思います。お読み下さりありがとうございます。
また⭐︎での支援応援も大変嬉しいです。合わせてよろしくお願い致します。
今日は短い話で申し訳ありません。
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