第15話 晒し

ダンジョン内を視察するため、今日は第10層から第1層まで階層を順番に確認しながら、歩いて降りていくことにした。

予定では、第6層と第7層の魔物の半数を連れて出ようと考えていたが、ダンジョンの入り口に到着する頃には、ほとんど全ての魔物が俺の後をついてきた。


「ふむ、これ以上ついてきても仕方ない。全員ついて来るなよ」


念話で命令を出すと、ようやく魔物たちは後ろに戻り始めた。

それでも半数ほどの魔物は同行する。安全のために、ダンジョン内に残る戦力も必要だ。


階層ごとに餌を補充し、準備が整ったところで、ダンジョン入り口に向かおうとしたその時、不意に声が響いてきた。


「マテェェェェアアアアアアアア!!!!……」


その声の主は、イクイゴだ。

ケースの中から俺を呼んでいる。

何か話があるのか?

だが叫んだ直後に気絶したらしい。

俺はケース横のパネルに手を当て、少量のDPダンジョンポイントを注ぎ込む。


<晒し停止>

<晒し再開>

<解除球化>


<晒し停止>←

「ピコッ」


ケース内に眩い光が降り注ぐと、イクイゴの傷が瞬く間に癒え、意識を取り戻した。

足元の卸し金も停止している。


<何か言いたいことがあるのか?>


俺は念話でイクイゴに問いかける。


「う…あ…お、お前、俺にこんなことして後悔するぞ。絶対に、この借りは返す!数千倍にしてやる!」


「そうか、数千倍にして返すつもりか。それなら、何かもっと具体的な手段でも考えているのか?」


俺は冷ややかに言い放ったが、イクイゴの表情には怒りと絶望が混じっているだけだ。


「ふん、どんな手段を使おうとも無駄だろうが、聞いてやろうか?」


俺はさらに挑発するように言った。


「クソッ!お前、俺をなめるなよ!俺は絶対に……」


<晒し再開>←

「ピコッ」


「ぇすかアァァァッァグウァワァァァワァアア!!!!」


イクイゴが再び絶叫を上げ、足元の卸し金が再起動した。

彼の体がゴリゴリと削り上げられ、苦しみの声がダンジョン内に響き渡る。

周りの魔物たちはその様子を見守っているが、誰一人として助けようとはしない。


「クソォォォ!!!俺は…俺はこんなところで終わるわけにはいかない!まだ俺にはやるべきことが…!」


イクイゴの叫びに耳を傾けながら、俺は再びケースに手を当てる。


<晒し停止>←

「ピコッ」


ケース内のイクイゴが再び再生され、傷が癒えていく。

その姿を見た俺は、さらに問いかける。


<で?そのやるべきこととは何だ?>


俺が問いかけると、イクイゴは悔しそうに目を見開く。


「お前には関係ないことだ!だが俺は、俺の仲間の無念を晴らす!ドーラも、ラインも、ローザもエレンも、全員お前に殺されたんだ!俺は絶対にお前を討つ!」


「ほう、なるほど。仲間の無念か」


俺は少し考え込むふりをしながら続ける。


<だが、お前の仲間たちは食ったやつ以外は既にゾンビとして蘇って、俺の軍団の一部となっている。使い捨てだがな。お前が討とうとしている相手は、すでに俺の一部だぞ?>


俺は意地悪く言い放つ。


「な、何だと!?そんなことが……許さない!絶対にお前を許さない!」


イクイゴの叫びが再び響くが、俺は冷静にケースを操作する。


<晒し再開>←

「ピコッ」


「ゆるサァァァィィィァアアアアゥゥゥゥゥ!!!」


再び晒しが再開され、イクイゴの体がゴリゴリと削られていく。

俺はその光景を眺めながら、再び問いかける。


<許さない、か。それなら、お前はどうするつもりなんだ?このまま俺に従うしかないんじゃないか?>


「……従うだと?……ふざけるなぁ!俺は誰にも従わない!お前ごときに屈する俺じゃない!俺は、絶対に負けない!!」


イクイゴの強がりにも似た叫びに、俺は再び操作を繰り返す。


<晒し停止>←

「ピコッ」


またもや再生するイクイゴ。だが、その表情には以前ほどの活力は残っていない。彼の体は次第に疲弊し、精神も削られていく。


「うぅ…俺は…俺は……」


<お前のやる気は買ってやるが、それで何ができる?俺に逆らえる力は、お前にはもうない。俺に従うしか道はないんだよ>


俺の冷淡な言葉が響く。


「くそっ……俺は、俺は……」


彼の声が次第に弱まり、言葉に力がなくなっていく。


<もう終わりか?それなら、最後に何か言い残すことはあるか?>


俺がそう言うと、イクイゴは僅かに顔を上げた。


「俺は……まだ……諦めない……!」


その言葉にわずかな意地を感じたが、俺は冷たく微笑んだ。


<残念だったな>


俺は再び操作を行う。


<晒し再開>←

「ピコッ」


「あきらぁぁぁぁィィィィァアアアアゥゥゥゥゥ!!」


イクイゴの絶叫が再び響き渡り、俺は再度、彼を晒しの苦痛に引き戻すことにした。彼がどれほど抵抗しようと、この苦しみからは逃れられない。


「もうこいつは駄目だな。晒しオンリーでいこう」


忠誠とは何か、俺の軍の統率とはどういうものか、イクイゴが理解する日が来るかどうかは分からない。

だが、それが分かる日が来るまで、彼には晒しの中で絶叫し続けてもらおう。


周囲の魔物たちが俺の指示を待っている。

彼らに号令を出すことにした。


<全軍に告ぐ、今夜はお食事パーティーだ!思う存分むさぼるが良い!>


雄叫びがダンジョン内に響き渡り、魔物たちは歓喜の声を上げた。


「GUOOOOAAAA!!!!」

「UGYAOOOO!!!」


今夜は、俺たちの宴が始まる。

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