第13話 球
「ローザァァァァ!!!」
イクイゴの絶叫が響く。
彼の目の前で仲間が落ちた落とし穴に飛び込もうとする彼を、同じダークエルフの魔術師ラインが必死に止める。
「待って!!まだ敵がいるのよ!」
魔物たちの攻撃は途切れることなく続いている。
治癒魔術師のローザが消えた今、ドーラとエレンが懸命に防御に回っているが、徐々に押されてきているのが明らかだ。
「ラインッ!放してくれっ!行かせてくれ!ローザがっ!」
イクイゴの焦りは限界に達している。
だが、冷静に考えれば、ローザはすでに魔人レントの餌食になっているに違いない。俺にはその音が聞こえてくる。
「クチョッ…ゴリッゴリッ…」
「ちょっと冷静になってイクイゴ!あれだけの魔物たちが落とし穴に固執している理由、絶対に罠よ!」
ラインは冷静に状況を把握していた。
しかし、彼女の言葉も届かない。
「まだ間に合う!ローザには何度も救われたんだ!あいつがいなきゃこの先だって進めやしねぇ!」
イクイゴはラインの手を振り払うと、そのまま落とし穴へと飛び込んだ。
「イクイゴッ!」
ラインは彼を見捨てるわけにはいかないと、すぐに後を追う。
ドーラとエレンもまた、仲間を見捨てるわけにはいかない。
二人も次々と落ちていく。
その瞬間を見計らって、俺はレントが食って吸収したローザからのDPダンジョンポイントを使い、第5階層と第4階層を繋ぐ巨大な階段を生成した。
同時に、第5階層に溢れていたゴブリンエース、ダークラミア、そして新たな混血種のハードゴブミアが、第4階層へと雪崩れ込んでくる。
混乱の中、ギガントオーガたちは目の前に現れた魔物たちを次々に捕まえては食らい、舞い踊るように殺戮を繰り返す。
彼らによる魔物たちの間引きが進むたび、俺のもとに流れ込むDPダンジョンポイントは増え続ける。
イクイゴは第3層から落ちてくる途中で左手から青い光を放ち、魔人レントを攻撃する。
しかし、レントは食後の休憩を邪魔されご立腹、そんな無礼を働いた勇者に対して、レントは怒りの表情を浮かべ、彼を平手打ちで光ごと地面に叩きつけた。
さらに、次々と落ちてくるライン、ドーラ、エレンたちをも容赦なく地面に叩きつける。
「ビシッ!バシッ!ペチョッ!」
起き上がろうとするイクイゴには強烈なストンピングを加える。
「ガンガンガンッガンッドスッドスッ」
ピクピクとわずかに動く勇者たちに、ゴブリンエースたちが群がり始めた。
「うう…や、やめろ…」
イクイゴの鎧がゴブリンエースたちに引き剥がされ、引き締まったダークエルフの身体が露わになっていく。
「いやぁぁぁ…」
魔術師ラインも同様に、装備を剥ぎ取られ、黒く艶やかな肢体を晒していく。
「うぁぁいたいよぉぉああああああ…」
緑の髪の精霊魔術師エレンは既にゴブリンエースの餌食となっている。
苦悶の表情も、ゴブリンエースから分泌される強力な生殖ホルモンによって尋常ではない快楽へと誘われ恍惚の表情へと変わっていく。
「ウアアアアア!!!」
一方で、ドワーフの戦士ドーラは頑強な体を活かし、ゴブリンエースを次々に薙ぎ払って奮戦していた。
「みんなっ!今助けるっ!!」
しかし、物量には勝てず、彼女もダークラミアに足を絡め取られ、上空に持ち上げられてしまう。
「くそぉぉ!離せぇぇ!」
激しく抵抗するドーラだが、数分も経たないうちに、彼女もまたゴブリンエースたちに群がられることになった。
「うえぇぇぇん!いやだぁぁ!」
泣き叫ぶ声も虚しく、ゴブリンエースから分泌される強力な生殖ホルモンによって彼女は快楽へと誘われていく。
「俺は男だぞっ!クソォォ!バーニングスラッシュ!!」
光をまとったイクイゴは、剣を振り下ろし、周囲のゴブリンエースたちを切り刻む。
だが、そんな彼に対し、俺はレントへと指示を送る。
<レントさん!お願いします!>
魔人レントはイクイゴを蹴り飛ばす、周囲のゴブリンエースごと第4階層の天井に叩きつけられるイクイゴ、ぐったりとなって落ちて来た所に倒れ込むようにボディープレスをするレントさん。
「あ…あぁ…」
どうやらボディプレスに巻き込まれた魔物達が大量に間引きされ、合わせて高レベルな勇者パーティーのラインさんとエレンさんも天に召されたようです。
群がるゴブリンエースに襲われているイクイゴさんの隣には、今だ生きて餌食となっているドーラさんの二重奏。
周囲では、間引きされた分を取り戻すようにゴブリンエースとダークラミアも家族計画に精を出している。
それらを食すギガントオーガ達との光景は阿鼻叫喚のオーケストラ。
それでは、真打登場としましょうか。
俺は第4階層に転移する。
阿鼻叫喚の光景が広がる第4階層。
生き残った者たちも、ゴブリンエースやダークラミアに蹂躙されていく。
俺はその混沌の中に、静かに転移した。
<静まれ!跪け!勇者パーティーと家族計画中の者は自由にせよ!>
一瞬にして静寂が訪れる。
第4階層に響いていた肉のぶつかり合う音が止まり、俺は広間に立ちすくんだ。
「アアアアオオオアアアア!!!」
雄叫びをあげるのは、完全に崩壊した精神を持つドーラ。
ザシュッ!
爪で一突きで締める。
美味しくいただこう。
<ご苦労。拘束を解き跪け!>
拘束していたダークラミアと家族計画中だったゴブリンエースが跪く。
「なんて事を・・・」
ボリッムシャッと頬張りながらイクイゴに近付くとイクイゴが泣き腫らした目で俺を睨みつける。
「なんて事を…何が目的でこんなことを…」
面倒な問いかけだ。
俺の答えはいつも決まっている。
ザシュッ!ザシュッ!ザシュッ!ザシュッ!ザシュッ!ザシュッ!ザシュッ!ザシュッ!ザシュッ!ザシュッ!ザシュッ!ザシュッ!
立ちはだかる者は皆、DPダンジョンポイントに変わるための存在だ。
それだけだ。
だが、何かがおかしい。
イクイゴを仕留めたはずの俺の手に、彼の分のDPダンジョンポイントが流れ込んでこない。
俺が足元を確認すると、そこには拳大の大きな球体が静かに転がっていた。
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