第8話 蹂躙
さて、サルシュの館が粉微塵になり、魔人レントもようやく一息ついたようだ。
全身を震わせながら、荒い息を吐き出し、その巨体を揺らして周囲を見回す。
何かを探しているようだ。
だが、俺はその目的を察していた。お前が探している家族は、残念ながらもうこの世にいない。
なぜなら俺が既に食ってしまったのだから。
美味かったぞ。
魔人レントと目が合った瞬間、俺はニヤリと笑った。
心の中で「ご馳走様でした」と言ってやるが、もちろん念話はOFFにしている。
彼が何を考えていようが、俺には関係ない。
ただ、彼の瞳にわずかに疑念の色が浮かんでいるのが見て取れた。
だが、彼の全身が血まみれになっているとはいえ、俺の黒い身体はそれをうまくカモフラージュしてくれている。
本来の予定では、このまま工房区を通り、農業区を荒らしながらダンジョンに帰るつもりだった。
しかし、魔人レントにはもう少し暴れてもらおうと思う。
彼には居住区を蹂躙させ、無秩序な怒りのままに殺戮を続けさせるのが良い。
闘争本能を全開にして、余計なことを考える暇を与えないようにするべきだろう。
俺のDPダンジョンポイントはすでに満タンに近づいているが、まだ安全な場所で余裕を持つことができる。
ここは焦らずに一度ダンジョンの最奥へ戻り、戦況を遠くから見守ることにしよう。
力を蓄えた上で、計画を着実に進めるのだ。
「魔人レントよ!お前の怒りを解放せよ!お前と家族を侮辱し、命を奪ったすべての人間に復讐を果たせ!今こそ、すべてを奪い尽くせ!その力を存分に使い、容赦なく命を奪い去るのだ!」
俺の命令が届いた瞬間、魔人レントの動きが一変した。
彼の巨大な体が、まるで獣のように次々と人間たちに襲いかかる。
逃げ惑う女や子供、年老いた者たちも容赦なく踏み潰し、その血肉を撒き散らしていく。
その光景はまさに地獄そのものであり、絶望と悲鳴が入り混じる。
もちろん、サルシュの館で得たような大量のDPダンジョンポイントは一般の住民からは得られない。
だが、住民の数は桁違いに多い。
彼らが次々と倒れるたびに、俺の元に大量のDPポイントが流れ込んでくる。
その勢いは止まることを知らず、俺の体内で溢れんばかりに蓄積されていく。
魔人レントの蹂躙を上空から眺めながら、俺は悠々と飛行を続け、やがてダンジョンへと帰還した。
戻るなり、溢れんばかりのDPポイントを使って新たに第6階層、第7階層を構築することに決めた。
これにより、ダンジョンはさらに強固な要塞となり、侵入者たちに絶望を与えることだろう。
第5階層にはゴブリンエースとダークラミアを20体ずつ、第6階層にはウォーリッチとアラクネクリスタルを10体ずつ配置。
各階層には新たな魔物たちが配置され、餌場も充実させる。
これでダンジョンの守りはさらに強固なものになるだろう。
さて、これからそれぞれの階層と魔物たちを改めて紹介しよう。
自慢したい気持ちは抑えられないが、それも無理はないだろう。
**第1階層**
広大なワンフロアに無数の落とし穴が仕掛けられ、侵入者たちは予測できない不意打ちを受けることになる。
落とし穴に落ちた者たちは無防備な状態で次の階層へ送り込まれるが、待ち受けるのはさらに過酷な試練だ。
- **ブラックスライム**
体長は10リットルから50リットル。黒く粘度の高いスライムで、猛毒を持っている。特に魔導リンゴを餌にすることで、体表面に帯びた電撃が侵入者に致命傷を与える。
**第2階層**
アミダ式のダンジョンで、外部からの侵入は現在も封鎖中。
この階層では、透明なガラスビーと微小なマイクロワームが待ち受け、侵入者をジワジワと追い詰める。
- **ガラスビー**
透明な蜂で、身体は脆いが、その針は一撃で相手を貫く。
群れで襲いかかり、獲物を無数の刺し傷で仕留める。
- **マイクロワーム**
体長わずか2センチの微細なワーム。
イモ虫系の餌に産卵し、内部から食い破る様は壮観だ。
**第3階層**
この階層は蜘蛛の巣のように張り巡らされた構造で、全域を<微生魔物の沼>が覆っている。
侵入者は移動速度を極端に遅くされ、魔物たちの格好の餌食となる。
豊富な餌場によって魔物たちの増殖速度も高まっている。
- **エビルフェアリー**
- **リリスナイト**
**第4階層**
この階層は高さのあるワンフロア。
上階から落ちてきた者たちは一瞬にしてギガントオーガに囲まれ、逃げ場なく攻撃を受ける。
- **ギガントオーガ**
巨体を持つオーガで、そのパワーは一撃で侵入者を粉砕する。
メス個体は細身だが魔力に優れ、特に魔法攻撃に対する耐性が強い。
**第5階層**
この階層ではゴブリンエースとダークラミアが支配者として君臨している。
過密状態のため、彼らは餌を奪い合いながらも、侵入者に対しては一致団結して攻撃を仕掛ける。
- **ゴブリンエース**
ゴブリンの上位種であり、膂力と素早さに優れる。
性欲が強く、あらゆる種族と交配する能力を持つ。
- **ダークラミア**
下半身が大蛇の姿を持つラミア。
尻尾の先にある棘で毒を注入し、暗黒魔法を操る。
**第6階層**
死霊を操るウォーリッチと、強固なクリスタルで覆われたアラクネクリスタルがこの階層を守っている。
- **ウォーリッチ**
死霊を操るネクロマンサーで、剣術にも優れる。
- **アラクネクリスタル**
上半身が女性、下半身が蜘蛛という異形の魔物。
クリスタルの糸で侵入者を捕らえ、動きを封じる。
**第7階層**
そしてこの階層には俺自身がいる。
最も強固な防御が敷かれた最奥のフロアだ。
ここにたどり着く者はまずいないだろう。
そうこうしているうちに、DPダンジョンポイントの流入が減ったと思って魔人レントを確認したら、なんだかピンチだぞ。
暢気にダンジョン自慢してる場合じゃなかった…
周囲を衛兵だろう人間たちが取り囲んでいる。
その後ろに魔法部隊だろう、エルフ達。
例によって円陣を組んで大規模詠唱が始まっている。
さらに後方から凄い数の矢が魔人へ向かって飛んできている。
両腕でそれらの矢をブロックして無理やり突き進もうとする魔人レントが確認できた。
せっかく作成した魔人という駒をダンジョンの自慢話してる間に、無為に死なせてしまうところだった。
<レントよ!撤収せよ!復讐も命あってのものだ!我がダンジョンで更なる力を蓄えリベンジせよ!>
呼びかけに答え、後ずさりし始める魔人レント。
敵の数は目算で1000人弱。
さぁて、たった一人で逃げ切れるもんだろうか?
援軍?
どうしよう?
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