11(余白)

 それからの僕は帰宅する。陰鬱な気分のあまり、風呂場に入りシャワーを浴びる。神楽さんのことが頭から離れない。

「何が悪かったのかすら、気づけていない自分が嫌だ」

 水の滴る顔でふと呟く。そうやって意識が明確になってやっと気づくのは、冷水で頭を流していたということ。それから思ったのは冷たいということ、なぜか間違ったというよりは冷水を意図して選んだという認識があること、そしてなぜ冷水にしたのかということが自分にも分からないということ。

 不毛な連想ゲームの中で僕は再び神楽さんの涙を思い出すと、胸が激しく締め付けられる。

 ワケの分からない悲鳴がこぼれる。

 食事をし、机に向かって教科書を開き、活字をすするあいだも神楽さんのことが忘れられなかった。これだけ考えていると、さすがに茫然自失としている自分に、自分で気づく。

 そして夜も寝るに眠れぬまま、朝を迎える。

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