(9)希死念慮
それからの僕らはお通夜だった。失言、揶揄しているようで頭で思っているだけでも反吐の出る言い方だった。
ともあれ、僕らはそんな調子で下校中の別れを過ごすことになった。
激しく、神楽さんを取り巻く環境には怒りを憶えた。僕の中に渦巻く同情の念には脱帽してしまう。一方で「キスマークをちょうだい」「傷が欲しい」そんなmentally ill(メンヘラ)な発言をさせてしまう境遇が憎くもある。
僕では推し量って余りある激情だと思えてくる。
別れ際の言葉はこうだった。
「誰かさんのイニシャルの墨でも入れようかしら?」
そう軽口を叩く神楽さんは笑おうとしていたが、実際は笑えていなかった。そのまま「また明日」ということが辛かった。
「あしたね」
呟いた神楽尚は、やはりかすかに震えていた。
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