(7)ワケもない
「どうして?」
それは放課後のことだった。
「今日、どうして話てくれたのかを教えて欲しい、初対面だったでしょう」
僕は聞き方もままならない言葉で少し乱暴に、投げかけていた。
「ワケなんて重要なことかしら、私は少し魔が差したのよ」
「本当に?」
帰りの校舎を出たところで偶然神楽さんを発見したことから話は始まった。
「聞きたいんだ。だってだれにも話すことじゃないだろう?」
言っていてまじりっ気のない、まるで純朴な言葉だなと感じていた。
「そう言うところだよ」
「……何が」
「黄瓦くんって含みのない言い方をしないじゃない。裏側を思わせる言葉を使わないじゃない」
つまり? そう聞こうとして理解する。けれど、それは一体身の上話をするほどの理由になるのかが分からなかった。
「それはそんなにいいことなのか?」
僕はその意義の解釈が理由になるのか、分からずにいた。川の流れに沸いた泡みたいだった。
「馬鹿だよキミ、ほんと馬鹿」
その言い分に、少し腹が立っていたかもしれない。
「なぜそう思うのか教えてくれよ」
「見て」
言いながら神楽さんは空を指差した。もう暮れ始めていた。指差したのは黄昏の赤い空だった。
「初めてだったからよ」「私はね、
「だから、ワケもない
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます