(4)ばか

 少し、ムッとした。本気かどうかは些して問題じゃない。ひっかかったのは、少女が僕に、あまり警戒心がないことだ。それだけに腹が立つ。

「何も、何も要らないよ。話をさせてくれ」

 僕は言い終えて自分の言葉を振り返る。不必要に語気が強かったのではと。

「手」

 僕は首を傾げてしまう。

「痛い」

 言われておののいた、すぐさま手を離す。掴む手が力んでいたのだ。

「ごめん」

 僕は謝りながらも少女に振り回されつつある自分に気付いてはいたが。

「ばか」

 その言葉ひとつで少女の振る舞いを許せてしまう。こんな僕は少しおかしくなっていると感じた。

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