(1)ひと声

   僕という人間はそうだ。矛盾を抱えて生きている。

 いつも、クラスのお調子者のような分かりやすい人間に嫉妬している、都度気づくと自己嫌悪が始まる。だから、一人の時間はなるべく作らないようにする。考えずにいるために。

 しかしどうだろう、いま僕は屋上への清潔に掃除された階段を登っているじゃないか。一人の時間に逃げようとしているじゃないか。

 気が狂っているんだ。


 そんないつもと違った行動をした日、僕は気の狂ったようにおかしな出会いをした。

 開けた扉の向こうには、ひとりうずくまって不貞腐れている女の子がいた。


 最初、声が出なかった、息が詰まっていた。言葉の一語一音がわからなかった。だからひと声をかける前に、体が動いた。

 隣に座った。

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