声というのは本当に不思議だ。目に見えないのに、人によって全然違う特徴がある。いったいどれくらいの声に人の声は分類されるんだろう? 確かに似ている声の人もいる。声の特徴を捉えてたくさんの人の声のものまねをすることができる人もいる。(たくさんの練習の成果であることはもちろんだけど)その中で稀にすごく特徴的な声をしている人がいる。それはその人が神さまからもらった人生の贈り物だ。(その人がそう思っていなかったとしても、間違いなくそうだと思った)みゅうはあんずの声を聞いて、そんなことをあらためて思った。

 あんずはとても綺麗で可愛い女の子だった。もちろん顔だけならみゅうのほうが可愛かったけど、それでもあんずは可愛かった。(好みの問題でみゅうよりもあんずのほうが好きという人もいるかもしれない)強い目も小さな顔も長い黒髪も素敵だ。背も高い。素朴で純粋な感じがするのもいい。(立っている姿勢もいい)まるでアイドルというよりは、モデルさんみたいだった。

 先生がレッスン場にきて、みゅうにあんずのことを紹介してもらうまでの間、ずっとお互いに黙ったままで静かなレッスン場の中にいたみゅうとあんずは、今、先生の前に立っている。みゅうはずっとあんずのことを気にしていて、あんずのほうは最初だけはみゅうのことをじっと見ていたけど、一度視線をそらしてからは、ずっとそこにみゅうがいないように、一人でじっと先生がレッスン場にくるのを待っていた。(そのことがみゅうはすっごく気に入らなかった。今日からはいった後輩なのに)

 ……、でも、そんな自分と同い年のあんずの歌を聞いて、みゅうの心は激しく震えた。(ぶるっと身体中が、足の指先から頭のてっぺんまで、一度大きく震えた)

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