みゅう(保留中)

雨世界

1 お願いします。私につばさをください。

 みゅう


 お願いします。私につばさをください。


 みゅうはアイドルになるために小さな子供のころから(……、今も子供だけど)有名な東京にあるアイドル養成学校に通っていて、日々アイドルになるために歌やダンスのレッスンをしていた。アイドルとしてデビューする目標の年齢は十五歳だった。みゅうは今、十三歳。デビューはできていない。時間はあと二年しかない。だからみゅうは焦っていた。みゅうはいわゆる天才とう子供ではなかった。歌もダンスも普通だった。もちろんアイドル養成学校の受験には合格しているので、なにもしていない人たちと比べれば歌もダンスも上手いと言われると思う。でも本当のプロを目指しているアイドルの卵たちと比べるとやっぱりみゅうの歌やダンスは普通だった。ただし、みゅうにはちゃんとした武器があった。それは『顔』だった。みゅうは本当に美しい顔をしていた。(自分だけがそう思っているだけではなくて、そうちゃんと学校で評価されていた)小さくて、猫っぽい、大きな目の顔。この美しい顔は才能がないみゅうにとっては本当に頼りになる武器だった。(それ以外の武器をみゅうは持っていなかった)だからみゅうは自分の美貌に力を入れていた。先生もお母さんもそうしたほうがいいと言ってくれたし、自分でも勝つためにはそうするしかないと思った。もちろん、歌やダンスのレッスンは真面目にやった。やらなければあっという間に追い越されてしまうからだ。(すごく努力していたり、すごい才能を持っているライバルの子たちは本当にたくさんいた。もちろん、かわいい子だってたくさんいた)そんなみゅうに運命の出会いが訪れたのは、その年の秋の初めのことだった。いつものように元気いっぱいでアイドル養成学校に行ったみゅうは練習着に着替えをして、レッスン場に「おはようございます」と言って入った。するとそこに見たこともない女の子が一人で立っていた。とても強気な顔をしている強い目の印象的な女の子だった。その女の子はレッスン場に入ってきたみゅうのことをまるで睨むような目で(初めて会うというのに、お前は敵だという目で)じっと見つめた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る