第24話 俺が生徒会に入る?

「ここで合ってるよな?」


 俺は目の前にそびえる生徒会室の扉を見上げる。


 カイルとの決闘に勝利した直後、学園一の美貌を持つ生徒会長、エイダに声をかけられた。


 話の内容は予想通り、スカウトだ。


 本来は平民のカイルが生徒会に招き入れられるはずなんだが、どうやらシナリオが変わり、俺になってしまったらしい。


 そんなことを考えているうちに、扉が静かに開かれ、中からメイドのような女性が現れた。


「お待ちしておりました、アレン様」


「ああ、他の生徒会のメンバーはいないのか?」


「はい、本日はアレン様とゆっくりお話をするため、他のメンバーは席を外しております。では、どうぞこちらへ」


 彼女に案内され、俺は生徒会室に足を踏み入れる。


 豪華絢爛な装飾、赤い絨毯、そして壁に飾られた高価そうな絵画の数々。


 一目見ただけで、この部屋が特別な場所であることが分かる。


 俺は少し緊張しながら、奥へと進む。


 すると奥に、今日の主役である生徒会長、エイダ・レール・ティンが優雅に腰掛けていた。


「アレン様、お待ちしておりました。私はこの学園の生徒会長、エイダ・レール・ティンです」


 紫の髪が揺れ、赤い瞳が俺を見つめる。


 エイダ・レール・ティン、公爵家の令嬢であり、原作ではカイルのヒロインだ。


 彼女は美しさだけでなく、冷静で知的なカリスマ性を持ち、プレイヤー達の間でも絶大な人気を誇っていた。


「それで、話とはなんだ?」


「実は、アレン様に生徒会へ入っていただきたいのです」


「俺が生徒会か。まあ、そんな話だとは思っていたが」


 生徒会に入るというのは、王道で出世が約束されるコースだ。


 入会できる者は限られており、エリート中のエリートしか選ばれない。


 卒業後は王の側近として仕える者がほとんどだ。


 しかし、俺はこの学園で「問題児」として知られている。


 そんな俺を生徒会に入れるというのは、正気の沙汰ではない。


「すまないが、俺が生徒会に入ると色々とまずいんじゃないか?」


「確かにアレン様の評判は良くないですね。でも、それは過去のこと。もし生徒会に入って活躍していただければ、その悪名も自然と消えていくと思います」


 エイダは優雅に微笑む。


 その笑顔には自信が満ちていた。


 確かに俺が生徒会で実績を積めば、過去の悪評も薄れていくかもしれないが、そんな俺を受け入れることで、生徒会にどんなメリットがあるというのだろう?


「いや、俺は邪魔なだけじゃ……」


「いいえ! アレン様の魔法は、この生徒会にとって必要不可欠です!」


 エイダは突然勢いよく立ち上がり、力強い声で断言する。


 俺はエイダの熱意に圧倒されそうになる。


 まさか、こんなにも俺を必要としているのか?


 なら話は早いな、実は俺にも生徒会に入るメリットがある。


 正直なところ、悪名なんてどうでもいい。


 俺が欲しいのは、内部の情報だ。


 生徒会に入れば、貴族や王族に関する貴重な情報が手に入るに違いない。


 これは見逃せないチャンスだ。


「良い話だ。では……」


「アレン様、こちらチョコです」


 俺が返事をしようとした瞬間、先ほどのメイドが豪華なチョコレートを手に持って現れた。


「え、えっと……」


「これは、アレン様のメイド、リュカ様が教えてくださったチョコです。お気に召していただけると良いのですが」


 目の前には、高級感溢れるお菓子が並んでいる。


 その見た目だけで、いかに上質なものかが伝わってくる。


「では、一口いただこう……」


 俺はチョコを口に運ぶ。


 その瞬間、甘さが口いっぱいに広がり、思わず頬が落ちそうになるほどの美味さだった。


「美味いな、このチョコは……よし、生徒会に入ろう」


「え!? ほ、本当ですか!!」


「ああ、エイダさんの説明は分かりやすかったし、熱意も伝わった。俺でよければ、生徒会に入るよ」


「ありがとうございます!」


 エイダは感激のあまり、突然俺に抱きついてきた。


 その瞬間、柔らかい感触が俺の体に押し付けられる。


「お、おい、近いぞ」


「す、すみません! 嬉しくて、つい……!」


 流石ヒロイン、何もかもが規格外だな。


 ――まあ、それはそれとして。


 俺が生徒会に入るということは、確実に周囲から冷たい視線を浴びることになるだろう。それはもう、覚悟している。


 悪名高き俺が、学園の精鋭集団に入るなんて、誰も歓迎するはずがない。


 だが、俺が欲しいのは内部の情報。


 生徒会でそれを手に入れるためなら、多少の犠牲は仕方ないだろう。


―――



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