第9話 ミケドニア海戦②
正暦1030年11月7日 ミケドニア王国領海上
「航空隊の攻撃、到達しました。巡洋艦2隻と駆逐艦10隻に命中、効果ありと認む」
「ティアマト」の
「残る敵艦の様子はどうだ?」
「艦隊主力を成す6隻は回避行動をとりつつ、被弾した艦に接近しております。恐らくは救助を行っているものと推察されます。対して小型のフリゲート艦とミサイル艇は我が方に向けて進んでおり、反撃を目論んでいる様です」
レーダーの探知情報を映すモニターを見つつ、オオイシは無線で命令を発する。
「接近する敵艦に対し、対応行動を開始せよ。すでにイニシアチブは我らの手にある、徹底的に叩き潰せ!」
「了解!」
・・・
「おのれ、ユースティアの劣等民族どもめ!」
駆逐艦「ハ・ノルム」の艦橋で、艦長は怨嗟の声を漏らしつつ艦を前へ進める。その左右には同型艦2隻とミサイル艇6隻の姿。ガロア海軍の新鋭艦であるハ・ノルム級駆逐艦は船団護衛と領海警備を主任務に据えたフリゲート艦で、新開発の7.5センチ速射砲と『デュランダル』艦対艦ミサイルを備え持つ。速力も36ノットと快速であり、ゴーティア海外州ではミサイル艇部隊の旗艦としても用いられていた。
「全艦ミサイル発射!徹底的に殴り返せ!」
命令一過、一斉に対艦ミサイルが放たれる。それは30キロメートル先に展開するミサイル巡洋艦「ギルガメッシュ」の知るところとなっていた。
「敵艦隊、ミサイル発射しました!数は36発!」
「対空戦闘始め!」
艦長の命令一過、甲板に埋め込まれる形で装備されているM27ミサイル
同じ艦隊を構成する駆逐艦からも同様に艦対空ミサイルが放たれ、敵の艦対艦ミサイルを撃墜。速射砲による正確な砲撃も加わり、撃墜数は増えていく。そして数分後、ほぼ全てのミサイルが撃墜された。
「全弾、撃墜を確認しました」
「お返しをくれてやれ。SSM、発射始め」
命令一過、舷側に向けて設置された四連装発射筒より『オルカ』艦対艦ミサイルが放たれる。艦載機の用いた『スカイオルカ』にロケットブースタを追加したバージョンである『オルカ』は発射時にロケットブースタで加速し、空中で巡航エンジンであるターボファンエンジンに切り替え。海面を沿う様に前へ突き進む。
迫り来るミサイルに対し、ガロア艦隊は速射砲の弾幕で迎え撃つ。しかし放たれたミサイルの数は16発と余りにも多く、そして全て捌き切るには30キロメートルという距離は近すぎた。
ミサイル艇は次々と被弾し、火だるまに呑まれていく。どうにか反転出来た3隻のフリゲート艦も、迎撃が間に合わず被弾し、炎上していく。僅か数分の間の出来事であった。
「敵残存艦、撤退していきます」
「追撃は不要。これでしばらくはエリス連邦への攻撃を躊躇う事だろう」
オオイシは部下に命じつつ、モニターを見つめる。艦隊で一番の攻撃能力を持つ巡洋艦が潰され、数的主力である駆逐艦も10隻が撃沈されれば、数の面でエリス連邦の艦隊に対峙する事は難しい。損傷した艦の修理と整備も含めれば猶更だろう。
そうして艦載機が帰投し、甲板に着艦していく中、警戒を行っていた「ギルガメッシュ」より通信が入る。同時にモニターには複数の光点。
『「ギルガメッシュ」より「ティアマト」、方位356より複数の航空機を捕捉。
「十中八九敵だろう。艦載機のうち燃料に余裕のある奴に対応させろ。撃ち漏らした敵を艦隊で対処する」
新たな命令に従い、甲板で燃料補給を終え、空中哨戒のために再度発艦していた〈シーファルコン〉は敵機の方へ向かう。敵攻撃機編隊の数は凡そ50機程度と推測され、明らかに海軍の動きに呼応する形で出撃してきたのだろう。
「ジーク1より各機、直ちに迎撃せよ」
命令一過、レーダーで捕捉した敵機に向けて空対空ミサイルを発射。敵攻撃機の編隊は対艦攻撃を優先するがために回避機動も取れず、一方的に撃墜されていく。しかも交戦海域も非常に遠く、航続距離の短い戦闘機が護衛に付いていける場所ではないのも影響していた。
斯くして、『ミケドニア王国海戦』はユースティア王国海軍の勝利に終わる。ガロア艦隊は巡洋艦含む18隻を喪失し、壊滅。残存艦艇はカロボスへ逃げ帰る事となり、大陸南部の制海権は連合軍側のものとなる。
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