第16話 川のせせらぎと夏のひつじ雲をきみと

澄み切った夏の青い空。煕は、また川沿いの高架下で璃乃と待ち合わせした。

川のせせらぎを聴きながら、璃乃と話すのが楽しみだった。

今日はどんな話で盛り上がろうか。


自転車で堤防を走りぬけると、頬に風が打つ。

目的地に着いて、ショルダーバックから図書館から借りた本を取り出す。

今日の本は、璃乃も好きなホラーミステリーの話だ。この話を教えてあげれば、背筋が凍るくらい涼しくなるだろうかと想像する。

鼻歌を歌いながら、階段に座って読み始める。


数分もしないうちに、璃乃が隣に座る。


「煕くん。今日は何の本読んでいるの?」

「え? ちょっと早いんだけど。まだ5ぺージしか読んでないから何も始まってない」

「まだ読んでないから……私も隣で読んじゃおっかな」

「何読むの?」

「さっくんが出てる雑誌。最近発売されてね。表紙飾ってるんだ!」

「あースノーマンの。……なんで、俺の隣で読むの」

「……煕くんが一番だけど、推しアイドルもやめられないよ」

 煕は頬を膨らませながら、璃乃の隣でホラーミステリーの本を読み進める。笑顔で鼻歌を歌う璃乃を横目に反対する理由も見つからなかった。


「本読んだらさ、新しくできたカフェに行こうよ。シャインマスカットのパフェが美味しいんだってさ」

「……ふーん。いいよ。煕くんのおごりね」

「コンビニバイトしてるけどさ。俺がおごるの?」

「私、彼氏におごられるのが夢なの」

「それ、前にも聞いた」

「いいじゃん。別に」

 舌をぺろっと出して、不機嫌になる璃乃を見て、煕はなぜかほほえましくなった。



 川のせせらぎの音を聴きながら、彼女の隣は心地よかった。

 これからもずっと一緒にいたい。

 顔を緩みながら、今の空間を大事にしようと決心した煕だった。


 空では大きなひつじ雲がたくさんできていた。璃乃と見る空はとても綺麗だった。

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君と出会った夏の1ページ もちっぱち @mochippachi

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