ポコ博士とペコの、何でもない暮らし。

ペコ

第1話

これは、とある日本のアパートの一角で暮らす、

おかゆ帝国出身のポコ博士と、妻ペコの、何でもない日々の暮らしである。




「ファー、今日もおなか一杯~!」

昼下がり、おひるご飯に天ざるを食べ終えた2人の夫婦。


夫の名はポコ。

自称博士だが、今は日本のとある会社で遅番で働いている企業戦士だ。

見た目は白衣を着たキジバトだ。


そして、妻の名前はペコ。

博士である夫に作られたブリキのインコ型ロボットなのだが、普通にごはんを食べるし、なんなら食いしん坊だ。

しかし、背中のネジを巻いても動く。かなりリアルに作られている事が分かる。


こんな一風変わった二人だが、おかゆ帝国というところからやってきて、今は地球の中の日本に仮住まい中だ。


「ポコさん~、今日もいつも通り13時半から家出るの?」

「そうだよ。」

「ペコもお見送りがてら一緒に出てもいい?商店街で買い物したくて。」

「いいよ~。」


二人して外出の準備をして、戸締りをして家を出る。

ペコはママチャリをカロカロ言わせながら隣を歩く。飛べるのに。


「そろそろ紅葉見に出掛けたいね~。」

外はまだ暑いけど秋の風が少しセンチメンタルな温度だ。

ポコ博士も頷いて、

「次の休みにでも計画しようね。」

と、いつものポーカーフェイスで答える。

そんなほのぼの鳥夫婦だ。


駅でブンブン羽を振って夫を送り出したあとは、ママチャリに乗って隣町の安い商店街まで自転車でビューンだ。

途中公園を通りかかったけど紅葉はまだ浅め。最近秋が短くてやだなぁ。などと考えながら自転車を転がす。


辿り着いた商店街の入り口で立ち止まり、駐輪スペースに自転車を止め、エコバックを肩にかけながら商店街のアーケードを進む。

おいしそうな総菜や、お饅頭、ケーキ…。


誘惑たっぷり。


ブンブンと煩悩を頭から追い出して、ペコは八百屋に入る。

冷蔵庫の中の野菜が枯渇しているのだ!

お安くて新鮮なキノコ、キャベツ、ニンジン、ぽぽんっと買い物かごに放り込んでいく。


「おおおおお!」

一番奥に鎮座していたのは甘くてなめらかなことで有名なサツマイモ。

中サイズが4本298円!

ペコの目がキラリと光る。


「…っしゃ。」

心の中でガッツポーズしながらサツマイモを一袋かごに入れて、仕上げにお会計。

1000円出しておつりが来る貴重な激安八百屋だ。


ふんふんと鼻歌交じりに袋詰めして、収穫を肩に掛けて帰りもノリノリで、ママチャリでびゅーんだ。


帰宅。

早速買ったものを冷蔵庫にしまう。サツマイモは良く洗い、お釜に入れて水を張って炊飯器にセットした。ピピーっと音がして起動する炊飯器。

準備万端でにっこにこ。

ペコはユワチューブを観ながら出来上がりを待つことにした。


節約主婦さんのいつもの動画や、節約会社員さんの0円デーの動画なんかを観て目をキラキラさせた後は、シブリの音楽を流して家計簿を付ける。


家計簿を付け終えても炊飯中なので、今度はBGMはそのままでツイットーを始める。クラシックロリータちゃんとか可愛いな。とか、神絵師のイラストをRTしたりだとか。というか、一日の大半をこんな感じで過ごしている。


「むむ。」

デジタルに触れ過ぎて眼精疲労。頭がガンガンしてきたのでスマホを閉じるペコだった。

気休めにビタミンAたっぷりの野菜ジュースを飲んで、お布団で横になる。

そうする内に昼寝していたのだが、サツマイモが炊きあがった炊飯器が『ピッピー』っと高らかに鳴いたので、緩慢な動作で起き上がった。


「むにゃ…。」

寝ぼけ眼をこすりながら時計を確認し、それから炊飯器のふたを開けて粗熱をとる。

頭痛いのを追い出すためにブラシで頭を梳いて頭皮をほぐしたら、よく手を洗ってサツマイモを1本、縦半分に切って皿に盛りつける。


湯気がほっかりと立ち上っている。


美味しそうなサツマイモの香りに鼻をクヒクヒさせて、スーパーで一昨日買っておいたバニラアイスをスプーンで盛り付けた。

アイスが溶けて来てなんとも言えないビジュアルである。


ご機嫌でテーブルに運ぶと、スプーンで芋を掘ってバニラアイスと絡めてクチバシに運ぶ。

「うんまぁ~!」

美味しさで目元が細くなり、火傷しないようにフーフーしながら味わってクチバシに次々運ぶ。


「これはポコさんにも食べさせてあげよう!」


満足げに食べ終えて、うんうんと頷きながらゴキゲンなペコだった。


ポコさんにサツマイモアイスを振舞う機会がなくて、サツマイモは悪くなる前にちびちびとペコが食べる運命なのは、また別の話である。



第一話、おしまい。

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ポコ博士とペコの、何でもない暮らし。 ペコ @peko-okayu

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