第27話

お風呂に入ってまずすることは体を洗うこと。

これでもかというくらい手にボディソープを付ける。

出来るものならこの体ごと漂白したい。


綺麗にして、まっさらだった自分に戻りたい。


「……キタナイ」



処女なんてものはとうの昔に失った。


アイツらに犯される度に心がどす黒く染まっていく。

この染まりきった黒を浄化するなんて不可能に近い。


白くまっさらで、綺麗なものなんて、私には残っていない。


この世界で生きるため、多くの人を犠牲にした。

私を庇って命を落とした者、潜伏がバレ殺された者、様々だ。

彼らからしたら、私は恨みの対象になると思う。

自分を守る前に、私を守らなくてはならなかったから。


それは全て私が未熟なせい。


ガリッと腕に爪をくい込ませる。


鏡に背を向けて振り返ると、とても綺麗とは言えない背中が映し出される。


犯される度に付けられた根性焼き。

初めは痛いし熱いし怖かった。

肉の焼ける匂いは異臭でしかないし、爛れていく自分の肌が気持ち悪かった。


だけど、そんな感覚も麻痺していって、今では何も感じない。


当然痛いのだと思う。

痛い熱い、などの一言で片付けられない程の痛みを味わった。


でももう、何も感じない。


殴る、蹴るなんて当たり前で、時には切り刻まれるようなこともあった。

刻むは、言い過ぎかもしれないけど。


だけど、痛みがない。

分からない。


私は完全に壊れてしまったんだ。

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