第11話

御触書おふれがきのような立札がある。そこには、


此処ここはことば遊びのくに其方そなたの招かれしこの場所は、しんの目的地の入り口に過ぎない。入り口を通り、中で其方が正しいと思う方へ進むべし。進むとことわざの世怪が現れる。其処そこで答えを見つけ出す事が出口への鍵となる。最後に、本当の意味を理解しなければ、出口は現れず。そして、入り口へも戻れぬ。』


男は、息を呑んだ。入らなければこのセピア街に突っ立ったままになり、中に入れば、何があるかわからない所を彷徨さまよい、しかも出口が見つかるか保証もない…。


(ここがどこなのかいまだにわからないが、夢なら早く覚めてくれ!!)

男の額を汗がつたう。


少しの間目を閉じ、先程まで目の前にいたはずの妻の姿を思い浮かべていた。何も言わないで…未花子はそう伝えようとしていてくれたのか…立て札を前にして、改めて意味のある仕草であったのだろうと確信した。


「ふ———っ」


男は深呼吸をした。


いちばちか…、

建物の入り口へ足を踏み入れた。


さて、男の決断はどう転ぶのやら…。





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