第9話
妻が、なぜ目の前に…。それとも似た赤の他人なのか…
男は目の前にある
操り人形のような不気味なその女は、何も答える事なく、道をふさいだ男に興味を示す事もなく横切って行こうとした。思わず、男は女の腕を掴んだ。
「待ってくれっ!」
腕をにぎられた女の身体は、ゼンマイ仕掛けの人形が止まるかのような妙な動きで歩みを止めた。
「未花子…、やっぱり未花子だよな⁉︎」
男は喉からしぼり出すよう、女に向けて声をかけた。
だか、女は何も答えようとはしない。
女の目に光はなく、とても濁っている。男が話そうとしたその時、女の手がカクカクッと機械的に動き出す。
女は一言も語らない代わりに、仕草で何かを伝えようとしているように見えた。目の前にいる女は、間違いなく妻だと確信した男は問いかける。
「ここはどこなんだ⁉︎それになぜ君がここに…」
言いたい事は山ほどあったはずが、混乱もあり男の口から出たのはその言葉だけ、その後を沈黙が貫いた。
【女が人差し指で「しーっ」としている不気味な画】
静かに、何も喋らないで…と、女が伝えようとしている事に気づいた男は、
妻は3年ほど前に他界しているのだ。だが他界したはずの妻は間違いなく目の前にいる。やはりあの世…黄泉の国か。思っていたよりも早く、妻の元に来てしまった…そう思うしかなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます