第8話
セピア街に迷い込んだ若い男は、わけもわからず、ただただ呆然としていた。見た事もない光景を前に、ここは地獄なのかもしれない…そう思い始めていた。
恐怖心を覚えた手は少し震えていた。周りを歩くぎこちのない不気味な人々。操り人形のようなその動きに男はこの場から早く立ち去りたいと強く思った。
元来た路を探し始めた。だが周りをキョロキョロと見渡しても、路はおろか明かりすら見つからない。
その時”ドンッ”
後ろからまた肩に何かがぶつかった。
とっさに衝撃のあった方を見る。すると、女が横切っていくのが目にうつった。男は目を見開く。
(この女…さっきの⁈まさか…⁉︎)
先ほど肩にぶつかった女の姿によく似ていた。先ほど、ぶつかって振り向く事すらしなかったあの女は、建物の方へ歩いて行ったはず…どういう事だ…。男は混乱する。
男は震える手で、ギュッと拳を握りその女の後ろから声をかけた。
「あの…すいません。ちょっといいですか?」
女には一切反応がない。反応どころか、男の存在が空気かのように見えていないようだ。
思いきって女の前に立ちはだかった。
「ちょ、ちょっと待ってくれ‼︎少しだけ話をッ…」
男の言葉がプツッと途切れてしまった。
【女の操り人形のような後ろ姿と男の驚いた表情の画】
男は驚愕した。目の前に突っ立っている不気味な女は、知っている人だったのだ。驚きのあまり開いた口がふさがらず、言葉にならない。
(み、
男の妻であった…
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