第5話
たんすの置かれた和室におもむろに上がったばあば。
「わたしが選んでやろう…。」
気のせいか、ばあばの声色が先ほどとは違い、少し低く感じる。
(もう、あとには戻れない…でも、まあ、どうせ終わる予定だった人生だ。これも何かの縁だろう。)
心の中でそう、男は覚悟した。
ばあばが、上から二段目の引き出しを開ける。だが何も入っておらず、予想を
覚悟したはずの男は、少し安堵する。
ばあばの影が、炎のように揺れている。男の方を、ゆっくりと振り向きながら、
「ことわざの
その時、暗い店内を、突如目が
「うわ———っっっ!!」
男はあまりの眩しさに、思わず目を閉じ、両手で顔を覆おうとする。だが、体がいう事を効かない。金縛りのような感覚はまだ続いていた。
どのぐらいの時間が経ったか、無音の中を男はしばらく目を閉じていた。ばあばの声もしない。おそるおそるゆっくりと目を開けてみる。
そこに見えたのは…
先ほど歩いてきた骨董屋のある路地裏の道。何が起きたのかわからず呆然とする。
あたり一面を白い霧が立ちこめており、店の場所を確認するも、周囲の景観は霧で見えなくなっていた。
手探りで、周囲に壁でもないかと探すが、指先にすら何も触れない。
男は、とうとうあの世にきたか……と思った。
【骨董屋に辿り着くまで・辿り着いてからの回想】
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