第30話

「お断りします」



「え?なんで?」







良いじゃん。俺、芸能人だよ?けっこう人気あるよ?一晩だけでもいいとか結構言われたりするタイプだよ?







すげえ自意識過剰な事言ってるの分かるけど、調子乗るんじゃねえよって感じだけど、でも、でも、でも!!




それでも俺は言いたい。嘘も誇張も一切していない。








俺がまさかのお断りに戸惑っていれば、耳障りの良い声が鼓膜を揺らした。








「だって、ここの常連さんですよね?そんな人と関係持つなんてめんどくさいじゃないですか?」







あっけらかんと言い放った。



めんどくさい、と。



分かる。確かに分かる。



めんどくさいよな。よっちゃんに感づかれたりしたくないよな。俺だって、そんなのめんどくさいわ。








でも、しかし、な?











キミの事、すっげえ抱いてみたいんだよなぁ。










そこにお互いのめんどくさい感情が絡まないなんて最高じゃね?




最低な事を言ってるけど、それがお互いにとっての最高だろ?




ふふ、と微笑みながら俺と同じビールを飲む彼女に、どう言い包めようか考える。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る