第23話

「さっき、フレンチでプロポーズから別れるまでのくだり見ちゃったんだけど」



「……まじっすか?」



「まじっすよ」








頭を抱えて項垂れる姿は、まさしく“やってしまった”と物語っている。





中々上げない顔をゆっくりと視線だけ俺の方に向けた。






「仁志くんには内緒の方向でお願いします」



「その心は?」



「心配掛けたくないから」







眉を下げてそういう姿は、どこにも嘘はなさそうで。





少しだけ潤み始めた瞳になぜか胸が高鳴ってしまう。





頑張れ!涙!!噴き出してくれ!



そうすれば、涙を俺が拭ってやるのに。







そんな想像もむなしく消え去り、彼女の瞳の涙は徐々に引いていく。








「内緒にしてあげてもいいけど、あの男との関係教えてよ」






なーんで、付き合ってもねえのに、プロポーズなんてされるのか気になるんだよな。



アラサーの男がこんな下世話な話に興味津々なんてキモい事この上ないけど。

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