第19話

「悪い悪い。アヤ、次何飲む?」



「あー、全然気にしないでいいから。じゃあ、同じの」






いや、本心はすっごい気にして欲しいですけど?



俺も、その楽しそうな会話に参加したくてたまんねえけどね!









そんな恥ずかしい事、口が裂けても言えねえし。









芸能人が立ち寄るバーって事で、基本的にここのバーでは一般人がいる時はみんなで会話なんてしない。








みんなで話す時は、みんなが業界人の時だけだ。








よっちゃんは、10秒もしないで新しいビールを目の前に出してくれた。






そして、俺は代わり映えなくスマホに視線を落とす。





着拒ってどうやるんだっけ?と、操作が分からずにGiigleを開き、着信拒否の方法を調べていると、よっちゃんから再び声が掛けられた。








「アヤ、腹減ってる?」



「え?ここってメシ出るの?」








今まで、ここに来てメシなんて出してもらった事もない。他の客が出されているところを目撃した事もない。








「出さないよ。でも、今夜は特別。すっげえ美味いから」








ニコリと嬉しそうにそう言うから、食べてみたくなる。

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