第15話

は~と息を大き目に吐き出せば、染みついた人間の汚さが体から出て行くようだ。








「最近、忙しそうじゃねえか」








カウンター内にある椅子に座りながら、嬉しそうに目を細めて俺に話しかけてくる。







「おかげ様でね。ありがたいくらいに忙しいよ」








悔しいけれど現実は露出していないと世間から忘れ去られるような存在の俺。




今は露出出来るだけ露出し尽くすという事務所の戦略が実情だ。





ここで出なくなったらどんどん若手に俺のポジションを奪われる。








だせえけど、客観的に見たら俺なんてそんなもんだ。







「休めてんのか?」



「もう一日オフとか思い出せないくらいにないかも。ドラマドラマドラマ、雑誌、イベント、的な」



「連ドラ何本連続出演だっけ?」



「まさかの9本。来週からめでたく10本目」







働き過ぎだな、俺。



まぁ、ここで踏ん張らなければいつ踏ん張るんだって話だけど。








「ひゃー、きっついな」







あはは、と大して心配もしていなそうに軽く笑い飛ばしてくれるよっちゃんに居心地の良さを感じる。








カタン、後ろからドアが閉まる小さな音がして振り向けば……

















はい?

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