彼女は魅力的だ

第14話

店内はオレンジの照明に照らされている。






俺世代の芸能人がふらりと飲みたい時に訪れる席数が10もない小さな会員制バー。






こんな小さな店で会員制なんて、儲かるのか?と思うけど、どうやらバーは税金対策で開いているだけらしい。このご時世に羽振りのいい話だ。







今日も相変わらず、レゲエがご機嫌に流れている。







「ちわーっす」








バーカウンターの中でグラスを拭いているオーナーの吉原さんこと、よっちゃんに挨拶をしながらカウンターに進む。






「おー、アヤか。久々」







俺に気が付いたよっちゃんも嬉しそうに頬を緩め、俺を歓迎してくれる。






ちらりと店内を見渡すと、カウンターに飲みかけのジョッキがポツンと一つあるだけで、それ以外に人は見当たらない。







ジョッキが置かれている席の隣を二つ空けて、背の高い椅子に腰を落とした。







「何飲む?」



「んー、ビール」



「ほいよ」








それだけ言えば、銘柄を聞かれることなく冷蔵庫から俺のお気に入りのベルギービールを手に取り、流れるような所作で瓶の蓋を開け、そのまま俺に差し出してくれた。







「どうも」







それだけ言って、喉にビールを流し込めば今日の疲れがやんわりと癒えていく。

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