第13話

どうなんだ、それ。





めんどくさい事言わねえって言ったって、絶対に時間が経てばめんどくさい展開に発展する可能性大だよな。









「アヤっ、お願い!」



「ないから。無理。またどっかの流れでそうなる事はあるかもしれないけど、とりあえず今はない。もう電話も取らないし、メールも返さないから。もちろん家にもこないで。まぁ、仕事場で会ったらその時は大人な対応してもらえたら助かるけど。」







あ、目的地が見えてきた。




どこからか、春の柔らかい香りがする。








「じゃあな。元気で頑張って」







それだけ言って、プツリと通話を終了させた。




晴れてこれでフリーの男に舞い戻りか。








マスクの下で、静かに上がっている口角に気が付きながら、バー“cactus”に続く階段を上る。







カンカンカンと寂れた階段の音を軽快に鳴らしながら、重いウォルナッツのドアを開ければ、大小さまざまのサボテンたちが出迎えてくれた。

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