第9話
人の不幸は蜜の味って、明日には周りの人間みんなに悲しそうな演技をしながらスピーカーしている姿が目に浮かぶ。
一応、付き合っている俺が言うのもなんだけどコイツは性格が悪い。
ただ、仕事に関する考え方は似ているし、尊敬できる所もいっぱいあるし、単純に可愛いと思うし、一緒にいると刺激があって楽しい。
まぁ、それも今日までだけど。
普段だったら“もう一件行くか”と誘ってくれる柴田さんも、今日は早々と帰ることになり、お開きとなった。
「今夜、どうする?うち来る?それとも行っていい?」
柴田さんの乗ったタクシーを見送りながら、甘い声で囁く千春に視線を向けると嬉しそうに俺を見つめている。
「んー、明日早いから、今日はこのまま帰る」
「じゃあ行っていい?」
「悪いけど、まだセリフ入ってないとこあるから今夜は一人で帰る。千春がタクシー乗った瞬間に電話するから」
「そっか、残念だけど分かったよ。じゃあまたね。仕事の後とかでもいいからいつでも来て」
「じゃあな」
せめて、タクシーくらいは捕まえてやろうと思い、少し道に出てタクシーを捕まえた。
「じゃーねー」
「ああ」
これが俺たちが恋人として交わした最後の言葉。
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