第8話

「別れるもなにも、付き合ってないじゃん。」









はいいいいいいい?






……まさかの?






そこ?







ぶっこみすぎじゃねかよっ!








隣りの柴田さん、ワイン吹きだしそうになってるからな?






話、振り出しに戻るどころの話じゃねえだろ。ゼロじゃなくて、マイナスじゃねえか。



つーか、ただの勘違い男と勘違いされた女ってオチ?








「放して」






それだけ最後に言い放つと、どこまでも冷静に店を出て行った。









フラフラと男も出て行くと、その瞬間薄暗かった店内に柔らかい灯りがともり、止まったままだったBGMが流れ始めた。





パッと、我に返ったように他の席でもそれぞれに口を開く。



もっぱら話題はさっきのカップルだろうけど。



寸分たがわず、このテーブルでもその話題だ。








「すごいドラマだったな」



「臨場感に溢れてましたね」



「だよな」






柴田さんとそう返せば、今度は千春が悲しそうな表情を浮かべて






「あの彼も幸せになれたらいいですね」






と、絶対に思ってもないような事を言っている。

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