第5話

視線が合わないように、皿を見つめながら目の前にある付け合わせのブロッコリーを口に入れた。








柴田さんも、千春も慌てて何かを口に入れて、”見てませんよ”オーラを醸し出している。









カツカツとヒール音が近づいてくるのを聞きながら、早く通り過ぎてくれ!と、心の中で懇願しながら、最早味もしないブロッコリーを噛みしめた。








「待って!!」



「放して!」









どうやら、帰ろうとした彼女を男が引き留めているらしい。








そして、その声は、俺のすぐ真後ろから聞こえる。




やばい、臨場感満載過ぎる。









「俺の事、好きって言っただろ?」



「……それはっ……、そんな雰囲気で“俺の事好き?”なんて聞かれたら、嫌いじゃなければ好きって言うでしょ?」








やべえ。超分かる。






言う、よな。



俺も言うわ。



全然好きじゃなくても、普通に言うわ。

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