第4話

他の席では、OKの瞬間に拍手をしようとスタンばっていた手が、決まり悪そうに静かに降ろされているのが視界に入った。





そして、先ほどまで一点に集めていた視線も気まずそうに店内中に散らばっていく。







ちらりと、隣の柴田さんを盗み見るも、薄暗い店内で視線を気まずそうに彷徨わせている。








「なんでだよっ!?」








気まずい沈黙を破ったのは、失意のどん底のような表情で跪いたまま縋るように彼女の腰をガッシリと掴みながら懇願する男の声。








「誰とも結婚するつもりないって何度も言ったでしょ?」



「そんなの結婚したいけど、素直に言えない、フリだと思うだろ!?」









いやいやいや。






思わねえだろ。










結婚をほのめかす女は、“結婚したい”とはっきりと言わなくても、「子供好き?」やら「この前言った結婚式が、ステキ」やら、結婚したいオーラを出しながら言ったりするけど、“結婚するつもりない”とは言わねえだろう。










「違うから。それに恥ずかしいからもう行くね」








容赦ねえな。











俺だったら、結婚する程惚れてる女に、こんな公衆の面前で拒否られたら立ち直れねえよ。






彼女は嫌そうに言葉を吐き捨てると、俺たちのテーブルに向かって歩みを始めたのが視界の片隅に入る。








マジかよ。



そっか、出口に近いもんな。



ここ通るしかねえよな。

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