第2話

意気込んで顔を向けたその瞬間、店内の照明がふつ、と消えた。







そして、東京が一望できる夜景がさらに瞬いて見える。









店内の様子には慌てた雰囲気もなく、停電ではなく誰かの誕生日か何かだ、と脳が瞬時に判断すれば同じように理解した柴田さんが低く男らしい声で静かに言葉を落とす。









「めでたいねぇ。こりゃツキもらって帰れるな」



「そうですね。幸せのおすそ分けしてもらいましょう」




ツキか。運とかツキとか、気にする人がすげえ多い業界。




俺が生きている芸能界。




実力があっても、どうしても日の目を見ない人を数多く知ってるから、ツキとか運をすげえ大切にする人が多い。








千春が嬉しそうに言葉を返すと、一つだけ他の席と離れた窓際の席にスポットライトが当てられた。









一斉に店内みんなの視線がそのテーブルに注がれる。








「わ~、ロマンチック」










千春の甘い声が鼓膜を揺らすのより先に、俺の視線はテーブルの女に釘付けになった。









すげえ綺麗な整っている顔をしている、でもおかしい。










………なんでだ?








様子おかしくないか?



明らかに、すっげえ嫌そうな顔。



不機嫌さを一つも隠す事なく、目の前に座る男をジッと睨んでいる。









……照れ屋なのか?







こう、サプライズ的なものが嫌いとか?






彼女が嫌そうにため息を零すと同時に、男が椅子から立ち上がり、彼女の前で片膝を付いて、跪いた。

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