第2話
意気込んで顔を向けたその瞬間、店内の照明がふつ、と消えた。
そして、東京が一望できる夜景がさらに瞬いて見える。
店内の様子には慌てた雰囲気もなく、停電ではなく誰かの誕生日か何かだ、と脳が瞬時に判断すれば同じように理解した柴田さんが低く男らしい声で静かに言葉を落とす。
「めでたいねぇ。こりゃツキもらって帰れるな」
「そうですね。幸せのおすそ分けしてもらいましょう」
ツキか。運とかツキとか、気にする人がすげえ多い業界。
俺が生きている芸能界。
実力があっても、どうしても日の目を見ない人を数多く知ってるから、ツキとか運をすげえ大切にする人が多い。
千春が嬉しそうに言葉を返すと、一つだけ他の席と離れた窓際の席にスポットライトが当てられた。
一斉に店内みんなの視線がそのテーブルに注がれる。
「わ~、ロマンチック」
千春の甘い声が鼓膜を揺らすのより先に、俺の視線はテーブルの女に釘付けになった。
すげえ綺麗な整っている顔をしている、でもおかしい。
………なんでだ?
様子おかしくないか?
明らかに、すっげえ嫌そうな顔。
不機嫌さを一つも隠す事なく、目の前に座る男をジッと睨んでいる。
……照れ屋なのか?
こう、サプライズ的なものが嫌いとか?
彼女が嫌そうにため息を零すと同時に、男が椅子から立ち上がり、彼女の前で片膝を付いて、跪いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます