第10話 力を授け

翌朝…と言っていいかは分からないものの私は目が覚めた、魔界は赤黒い不気味な光に常に包まれていて太陽?は黒い、時間を把握するのが難しいのだ、そして私は赤い綺麗なベッドの上で目を覚ます、隣にはリアナさんがいた


「おはよう、私のベッドは心地よかった?」


「リアナさんは…寝なかったのですか?」


「まぁ…私は寝る必要が無いから、体の方は大丈夫そう?」


「少しまだふらつきますけど…だいぶ楽になりました」


昨日は心労と血を吸われた事が原因で気絶するように寝てしまった、そのあとリアナさんがベッドに寝かせてくれたのだろう、殺すこともできたはずだが彼女がそうしないのはもうわかっている


「おはようございます、姫様、それと…ニンゲン…なぜ姫様のベッドに座っているのですか???」


「ネフィア落ち着きなさい、これは私がしたことなの、彼女は魔族になることを既に受け入れているわ」


「!?そ、そうなのですね、失礼しました」


「うん、私はリアナさん…姫様の力になりたいの」


「どうやら彼女を手なずけたようですね、さすが姫様です」


「その言い方はやめてちょうだい、彼女が自ら選びとった道よ、私は何もしていないわ」


彼女は嬉しそうに笑った、私も少し嬉しい気持ちになった


そして数分後、扉を叩く音と共にあの魔族達が現れた、いや、なんだか3人増えている


「戻りましたわ〜!せっかくですから長女ちゃん…フィリアちゃんもつれてまいりましてよ?」


「こんにちは姫様、昨日は私にこのような幸福な道を授けて下さり、ありがとうございます」


続いて他の魔族たちも現れた


「こんにちは姫様、魔法の方ですが完成しましたので是非ともそこのニンゲンに使ってみてください」


「フフフ…こんにちはお姫様、昨晩そのニンゲンはどのような反応を示していましたか?ぜひ聞かせてください…フフフ」

「その通りねあなた、そうそう、ちゃんと次女のフィムンも連れてきたわ」


「こんにちは姫様、貴方様のおかげで私は最高に幸せになれました…どうかフィーナにもその幸せを授けてあげてください」


「よっ!姫さん!魔法には興味ねぇが何やら面白い成果が出たみたいだからな!見に来たぜ!」


「リアナ、素晴らしい成果が出たみたいだからな、ご飯の時も話したが今回の魔法がどのような未来を魔族にもたらすのか、見に来たぞ」


「リアちゃ〜ん!ついに完成お披露目ね!お母さんとっても期待しているからっ!」


「え、えぇなんだか授業参観みたいね…」


「?姫様、どうかされましたか?」


「あ、なんでもないわ」


なんというかとんでもないオーラを纏っている魔族達が現れた、昨日のやつらもそうだったが瘴気は抑えているもののその溢れ出る闇魔力から凄まじい強さを持つ魔族達だということはわかった


「フィーナ、そういえば紹介がまだだったわね、彼等は魔王軍のトップである四魔相達と私の父さんとお母さん…魔王と魔王妃にあたる者たちよ」


「!?ひっ…」


つい恐れの声を出してしまった、四魔相…学校で習ったことがある、彼等は単騎で人の軍を蹂躙することができる力を持った化け物達で彼等の存在があるせいで私達は劣勢を強いられているのだと


「ふむ…怯えているな、やはり脆弱なニンゲンはその程度か」


「まぁでもこれから魔族になって私達の仲間入りするのよね?なら安心だわ!」


「ま、軽く小突いただけで壊れちまいそうだしな」


そんなことを口々に言う、人を完全に下に見る発言が多くやっぱりリアナさん以外は化け物しかいなさそうだった、私がついて行くべき人は決まっている


「えっと…フィーナ?どうしたの?」


「へ?リアナさん???」


私は気がつくと震えながらリアナさんの腕にしがみついていた、びっくりして手を離した


「ご、ごめんなさい!私とんでもないことをっ!」


「い、いや、いいのよ…みんなちょっと怖がらせすぎよもう少し加減してあげて」


「ふむ…リアナは優しいのだな、しかし何やら随分と懐かれているようだが…」


「ええ、彼女はもうすでに私に魔族となって仕えることを受け入れているの」


「はい…私は姫様について行くと決めました、これは誰かに洗脳されたとかではなくて…私の意思です」


「「「「「「!?」」」」」」


皆が驚いたような顔をする、それもそのはず昨日まであんなに怯えきっていた私がこんなに従順になっているのだから


「えっと姫様?なんだかすごい従順になってますけど…何があったんですの?」


「まぁ、彼女は私の話を聞いて共感を持ってくれたの、今では協力者になることを約束しているわ」


リアナさんが…いや姫様が私をそう言い紹介してくれた、私は目の前の人類の大敵達に深々とお辞儀をした。


「さ、それよりも早く魔族化を行いましょ、アデムリお願いね」


「はい魔王妃様、それでは姫様失礼致します」


「ええ、お願いね」


そう言いアデムリと呼ばれた魔族は姫様のおでこに指を当てた、不思議な魔力が彼女のおでこに流れていくのが見える


「これは…なんだか想像以上ね?」


「はい、姫様の案にあった相手の望む魔族へと変える機能を持たせるために全ての種族の魔力波を盛り込んだためかなり複雑な魔法となりました、姫様以外では扱うのは難しいかもしれませんね」


「あら、そうなのね…まぁいいわ、さてフィーナ、準備はいい?」


そう言い私の方に向き直る姫様、正直かなり怖い、でももう私の答えは決まっている


「うん…大丈夫です姫様、私を魔族に…変えてください」


「えぇ、それじゃあどんな魔族がいいか、好きな物事とかでもいいからイメージしながらお願いね」


なりたい魔族…それは思い浮かばないものの私には好きなことがあった、それはお花を育てること、お母さんと庭で色んな色合いの花を育てていたのだ、いつか庭一面を虹色にするとか言っていたこともあったっけ


そう思っているタイミングで私の前にとんでもない量の闇魔力が姿を現す、本能的に”この世界に存在してはいけないレベルのもの”と理解する事が出来てしまう程の莫大な力が感じられた


わたしは息を飲みそれを受け入れた


「ひゃ…ひゃぁぁぁぁあっ!!」


存在そのものがぐちゃぐちゃに掻き回されるようなそんな感覚だった、最初は苦しかったものの段々とそれは心地の良いものに変わっていき私を完膚なきまでに書き換えようとする


「な、な、な、何こりぇ…しゅごすぎるよぉぉぉ!!♡♡」


あまりの多幸感に気を失うかと思った矢先私の体が熱を持って変化を始める


「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ♡♡しゅごいよぉ…私…変わってる…変わっちゃう♡♡姫様ぁ♡♡」


肌がみるみるうちに暗い緑色になっていき頭からピンクの大きな花が生える、腰から下が口のような器官を持った蕾におおわれた、髪の毛は緑色になっていき、茨のようなツタが生えてくる、腰の辺りから凶悪な牙を持った植物も2つほど生えてきて…


「あ゛っ…♡♡」


変化が終わった瞬間…私の中の心がものすごい勢いで書き換わっていく…ニンゲンは弱く脆い存在、私達魔族に支配されるべき弱者…魔族として欲望のままに生きていきたい…そんな本能が私の中に芽生え焼き付く、さらに魂の根幹に姫様への忠誠心が根付く、私はこのお方の忠実な配下、全てを捧げて仕えたい、そんな感情に支配された後耐え難い幸せに包まれ…


「はぁはぁ…♡私…変わっちゃたぁ…♡♡もう戻れないのに…なにこれ…幸せぇ…♡♡」


「終わったようね、どう?変な感じはしない?」


「はい!姫様!私は生まれ変わりました!あぁ…今までの私はなんて愚かだったのでしょう…ニンゲンは魔族に支配されてしかるべきなのに…無意味な抵抗をしていたなんて…これからはこの力で持って姫様と共に人を蹂躙していきたいですっ…♡♡よろしくお願いします!♡」


私は完全に生まれ変わった、私を魔族に変えてくださった偉大な姫様…私の全てである姫様…この世の主たる姫様…そんな神よりもはるか上の存在である彼女に仕えられる喜びが溢れて全身を包む、私のあらゆる全てはもう姫様のものだ


「え、ええ、これからよろしくね?…蹂躙???」


「はい!姫様!このフィーナ、今日よりこの身この魂全てが貴方様のものです!」


寛大な姫様は愚かな私を受け入れてくださった、最後の方になにか少し喋っていたものの小声でよく聞き取れなかった、しかしそんなことはどうでもいい、なんて素晴らしい方なのだろう、彼女のお力の元世界は新たな支配者を迎えるのだ…この幸福を全ての種が享受できる…その理想の世界のためわたしは全てをこの方に捧げよう


「あらあら、とっても幸せそうね、魔族に変えてあげられてよかったわ!」


「成功だな、さすがリアナだ、よくやった」


「おぉ、アルラウネとなりましたか、何やら我ら四魔相に匹敵する力の気配も感じますね…素晴らしい」


「確かにすごい力の気配ですわ…戦ったらどうなるか分かりませんわ…」


「おいおいすげぇアルラウネが生まれちまったな、これならエルフとかも蹂躙できんじゃねえのか?」


「フフフ…素晴らしいお力…これなら天使や女神を相手にしても引けを取らないでしょう…フフフ」

「その通りねあなた、とっても頼もしいわ」


「あぁ…私達の末っ子がとっても強いアルラウネに…なんて幸せなの…嬉しい…」


「さすが姫様です、後ほどフィーナさんの新しい服もご用意しますね」


「ありがとう、助かるわネフィア」


集まっていた魔族達が私を歓迎する、こんなにも愚かだった私を彼等は歓迎してくれている、先程まで恨んでいたのがバカらしく思えてきて…より魔族になれたことが嬉しくなった、誇らしくなった


「さて…これでお披露目も終わりだな、私達は皆それぞれのやるべきことがあるからな、また別の機会に交流するとしよう、フィーナもそれでいいかな?」


「はい!魔王様!これからは私も魔王軍のために力を尽くします!」


「その力があれば必ずや幹部クラスを確立できるだろう、期待しているぞ」


「はい!」


そう言い彼等は解散した、お姉ちゃん達もそれぞれ仕える四魔相へついて行った。


自分の体を確認する、その体は人間とはかけ離れているものの自然と動かし方がわかった、とても体が軽く今ならなんでも出来る気がする…私はほんとに魔族へと生まれ変わったんだ…そう深く自覚し私は愛おしむように自分の肩を抱いた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


皆が解散した後、私とネフィア、フィーナの3人は部屋で服を決めることにした、フィーナをアルラウネにする際、服の一部が破れてしまったためアルラウネ用の服を調達したのだ


「どうですか?姫様、ネフィアさん」


「いいんじゃない?私はその服とっても似合っていると思うわ」


「そうですね、頭に生えたピンクの花とマッチしていて可愛らしいですよ」


「そ、そうかな…えへへ…ありがとうございます!」


フィーナはとても幸せそうな表情をしている、私はその様子を見て安心した、これからの旅路のため、一歩前進といったところだろう、彼女の可愛らしい姿を眺めていると…


「姫様…その…少しよろしいですか?」


「?どうしたの?ネフィア」


「その…フィーナさんは姫様のお力で四魔相にも匹敵する力を手に入れました、彼女ならきっと姫様の力になってくれるでしょう…ただ私はそこまでの力がないのです…」


「あぁ…そういうことね…」


確かにその通りだった、私の莫大なステータスを元に発動した魔族化魔法、それによって力を与えられたフィーナはとんでもない力を手にした、先程ステータスを計ってみたところ四魔相に匹敵するステータスを持っていたしそれは確実だった。


しかしそういったことをされていないネフィアは力不足を感じてしまっているのだ、これまで私の知らない間もこのリアナに仕えてきただろうに…彼女にも力を与えて然るべきだろう…魔族化魔法を応用することで力を与えられたりしないだろうか?


「わかったわネフィア、そこに座って頂戴?」


「こちらの椅子にですか?かしこまりました」


そう言い私は先程の魔族化魔法に教えてもらった応用術を用いて少し魔力形式を変えてみた、人を変質させる力は取り除かれているはずだ、純粋に魔族相手に私の力を分け与えることができる力が形成されていく


「ネフィア、今からあなたにこの力を与えるわ、この力でもって私と共に歩んでちょうだい」


「!はい!もちろんです姫様!ありがとうございます!」


「おめでとうネフィアさん!力を貰う時すっごく幸せな気分になれるよ!」


そして私はネフィアの胸の下辺りに手を近付けその魔力を押し当てた


「んっ!?きゃぁぁぁぁぁぁぁあぁッ!」


ネフィアから発せられる魔力が爆発的に膨れ上がる、それと同時に彼女は顔を赤らめ幸せそうな表情をして荒い息をしていた


「はぁはぁ…♡♡すごいですね…これが姫様のお力…最高にいい気分です…この力…全てを姫様のために捧げます!」


「ふふふ、ありがとうネフィアこれからもよろしくね」


「はい!もちろんです姫様!」


彼女から発せられる闇魔力と瘴気が四魔相クラスに膨れ上がった、成功だ、これでネフィアはより頼もしい存在となった、私としても嬉しい限りだ


(ただ…ちょっと気になるのよね…)


力をわけあたえる、それ即ち私の力を落とすことができているのではないか


そんな希望を持ちステータスを確認してみると


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サナト・リアナ レベル2147483647

HP:2147483647

MP:2147483647

攻撃力:2147483647

魔力:2147483647

防御力:2147483647

精神:2147483647

速度:2147483637

幸運:2147483647


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


(だ…ダメかぁ…)


残念ながら力が減ることは無かった、やはり私は力を問題なく振るうことは許されないようで…これからもし戦闘になるときは彼女達を頼ることにしよう…そう決めた私であっ

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