第8話 魔族化魔法創造

「フフフ…そうです、ニンゲンは魔界から来る闇魔力と天界から来る光魔力の合成によって生まれる魔力によって力とエネルギーを得ているのですよ」

「その通りねあなた、ニンゲンはふたつの種からエネルギーを、天界はニンゲンから信仰を、魔族はニンゲンという食糧を…という形で繋がってるのよ、どれかひとつでも欠けるとその時点で世界が大きく揺らいでしまうわね」


ふむふむ、そんなことを言いながら私はノートにふたりが教えてくれたことを書いている


作者の私はある程度知っていることがあったものの現実となったこの世界ではやはり多くの変化が生じていた、知らない事がいっぱいだった


例えばこのゲーム、マルプルワールドはターン制バトルのRPGだが現実にターン制なんて無いので好きなタイミングで攻撃できるし回避も防御もできる。


他にも面白かったのがバフやデバフの継続時間だった、ゲームでは【2ターン後に解除】とかの表記になる効果は現実だと20秒持続になっていた


1ターン=10秒、と見ていいだろう


「ありがとう2人とも、とても勉強になったわ」


「フフフ…ありがとうございます、ではもうひとつ…本日最後の内容は魔法創造についてです」

「こちらこそありがとうね、お姫様、ちなみに魔法創造に関してはアデムリも呼んでみたいところね」


確かに彼がいるならとても心強い、きっと有用な魔法を生み出せるはずだ。


その後は魔法の仕組みや新しい魔法が生まれる事例、その活用方法及び魔法創造の過程等を学び今日の授業は終わった


「フフフ…さて本日の授業はここまでとしましょう、お疲れ様でしたお姫様」

「ええその通りねあなた、お疲れ様お姫様」


「ありがとう2人ともまた明日もよろしくね、アデムリも来れそうならいいんだけど…」


「そうですね、四魔相の皆には一通り伝えておきましょう」

「その通りねあなた、あとお姫様、さっき言った宿題しっかりやっておいてね」


「ええ、もちろんよ」


宿題、転生して以来の言葉だ、今回の宿題の内容は作りたい魔法の内容を練ることと思いついたのなら具体案も文字に起こしておくことだった


(私の作りたい魔法…実は決まっているのよね…)


私のステータスならどんな魔法も使えるようで2人とも何やらワクワクしている様子だった、アデムリも創造魔法について少し触れていたし同じ考えだったのかもしれない


(戦争を終わらせるために役立つ魔法…できる限り殺さないようにするための魔法…そのためには協力してくれる仲間が欲しいわね…私と同じ人間でありながら魔族になった存在が欲しいわ)


以前から考えていたことだった、この相手を魔族に変える魔法が実現したらきっと戦争を終わらせるための一助となるだろう、まずは共通の存在の仲間や友達が欲しいものだ…ゲームでも主人公が旅に出る中で仲間が増えていった…今はネフィアだけだがいずれは勇者一行も仲間に引き入れたい


(勇者一行には裏切りルートを歩んでもらわないとね…)


裏切りルート、勇者でありながら魔族に肩入れし最終的には魔族として人を魔の力で支配、女神と天使を滅ぼすルート…もちろん同じ元人間同士で魔族を内側から変えていくための手だ、本人に同意を得た上での魔族化となる


2人が去った部屋の中で私はさっそくノートのページをめくり宿題を進めていくのだった。



後日授業開始の時間ピッタリに私の部屋の扉を叩く音が鳴った


「いらっしゃい、入っていいわよ」


「失礼します姫様、本日は魔法創造をされるということで…わたくしアデムリも参加させてもらう事になりました、よろしくお願いします」


「フフフ…よろしくお願いしますねお姫様、きっと素晴らしい魔法が生まれることでしょう」

「その通りねあなた、それじゃあお姫様、昨日の宿題、見せてもらえる?」


「ええ、ちゃんと考えてきたわ…はいこれ」


そうして魔法の案を書いたページをちぎって渡したすぐあとに…


「失礼致しますわーーーーー!!!!!!!!!!!!」


快活な声で私の部屋に飛び込んできた者がいた…吸血鬼ルテリカだ


「2週間ぶりですわ!!姫様!とても順調そうですわね!!わたくしも魔法創造に興味あってきてみたのですわ〜!」


「ルテリカ!?あなたも来ていたのね」


流れ的にグルアスも来るのかなと思っていたら…


「あなた、なんだか姫様、すごく面白そうな魔法を書いてきたみたい」

「フフフ…どれどれ、おぉこれは…堕天使としてとても魅力的な魔法ですね…フフフフ」


「ほう?私にも見せてくれ」


「なんですの!?気になりますわ〜!!」


来なかった、まさかのグルアス仲間はずれである、まぁたしかに彼に魔法を使うイメージ無いので予想はしていたが…


(予想はしていたけど…なんか今頃くしゃみしてそうだなぁ)


どこからともなくくしゃみの音が聞こえた気がした。


「フフフ…さてお姫様、今回の宿題の内容確認させて頂きました…素晴らしい魔法案ですね、これが実現したらより面白いことになりますよ…フフフフ」

「その通りねあなた、なんだかワクワクしてきたわ」


「ふむ…相手を魔族に変える魔法か…以前魔族に変わりたいという人間もいたがその時は叶えてやれなかったな…創ることに成功したら私にとっても役立ちそうだ」


「わたくしの眷属化スキルに近いものを感じますわね…役に立てると思いますわっ!」


みんなやる気のようでよかった、何とか魔族化魔法を創れるようになるといいが…


そんなこんなで皆で力を合わせた魔法創造の時間が始まった


「ルテリカ、お前の眷属化スキルの魔力波をここに流してくれ」


「一応やってはみるけど…このスキルは相手の血を吸わないと発動しませんわ…」


「フフフ…では私達のスキル堕落の囁き等はどうでしょうか?多くの天使がこのスキルにより堕天使となっていきましたし魔族化に近いのでは?」

「その通りねあなた、さっそくやってみましょ」


「いやそれは相手が天使だから起きているのであってニンゲンには洗脳程度の機能しかしないだろう?」


「フフフ…実はニンゲンにも闇魔力を注ぎながらであれば魔人種へと変えることは可能なのですよ…フフフ」


何やら4人でとても盛りあがっていた、中身一般人の私には魔法創造の工程とかちんぷんかんぷんなのですっかり蚊帳の外だった、とりあえずネフィアが容れた紅茶を飲みながらその様子を眺めていると…


「「「そうだ!実験用に人間を捕まえてこよう!!」」」


ブフッ!!!?


あと少しで盛大に紅茶を吹き出していた、むせているところをネフィアに心配されつつも私は呼吸を整えた


「え、今なんて???」


「?ちょうどいい人間さらってくるのですわ!その人間を私が眷属化させてその魔力波をアデムリに捉えて貰うのですわ!」


「そうだな、そうすれば魔族化魔法完成が1歩前進するだろう」


(だ、大丈夫かな…なんかこの人たちサラッと誘拐宣言してるんだけど)


自分から考えた最善策のつもりだったのに実際にこれからその人の人生を狂わせると思うと…その重責が罪悪感となって私に襲いかかってきた。


(でもそうして得た仲間と魔族を内側から変えないと人間はみんな家畜か奴隷になってしまう…私が人間か天使側につこうものなら魔族は封印され私の行くあては無くなってしまう…そもそも魔族の私は彼らに受け入れられない…)


そう、これしか道は残されていない…そう自分に言い聞かせて攫う人数は最低限の条件の元許可を下ろした


30分程度で帰ってきた彼等は気絶した人間の少女3人を抱えていた、これでも最低限の数だった、私が何も言わなければ何十人と連れてくるつもりだったらしい。


「さて、ちょうどいい感じの姉妹3人組がいたからサクッと持ってきましたわっ!」


「フフフ…彼女たちは幸福ですね、これから魔族として生きる道を与えて貰えるのですから」

「その通りねあなた、素敵な堕落を期待してしまうわ」


「そうだな、さて早速始めるとしよう、ルテリカ、頼む」


「おまかせあれ!ですわっ!」


目を覚ました3人は魔族に囲まれたこの状況に絶望し恐怖で震えている


「ひっ…だ、誰か助けて…」


「いやっ!お母さん!お父さん!お願い誰か!」


「ぁ…あぁ…あ゛ぁぁぁぁぁぁあッ!」


なんというか地獄のような状況だった、私はそんな状況を間近で見せられて目を塞ぎたくなったが…私の魔族としての1部である第3の目はその意思に反して見開かれ、内側から邪悪な意思が流れ出てくる


【ふふ…この子達は幸福ね、いずれはみんなが魔族になるのが理想ね】


私はその邪悪な思考を振り払う、絶対にあってはならない思考だと言い聞かせて…魔族に変える人間はできる限り抑えておきたいのだ…あくまでも魔族を内側から変えるための手段なのだから


「ん〜煩いですわね…喉笛掻っ切りますわよ?」


「「「ひっ…」」」


(ごめんなさいごめんなさい…どうか許して…)


私は心の中で謝ることしかできない、目の前で起こる惨状に対して…私は無力なのだ、これしか道はなかった…仕方がなかった…そう考えないと泣いてしまいそうだった


そうしてルテリカが長女であろう人の頭を片手でガッシリ掴んで顔の近くに首を近づけて…牙を剥き出し首筋に噛み付いた


「あ゛っあ゛あっ…アヒッ…」


掴まれた直後は抵抗をしようとしていたが何やら麻痺状態をかけられたのかすぐに脱力し動かなくなった、すかさずアデムリがその状態の長女の額に指を当てる、魔力波を測っているのだろう


「あ゛ぁぁぁぁぁぁあっなにこれっ…私が奪われ…あひっ…なんでこんな…幸せなのぉぉぉぉっ!♡♡」


ぢゅるぢゅると彼女の血と人間が奪われていく音が聞こえる、身体はみるみるうちに青白くなっていき瞳は赤く染っていく、そして吸血鬼の牙が生えてきて…


「プハッ、終わりましたわ〜!」


「ご苦労、良い魔力波が取れたよ、ここに堕落の囁きも組み合わせて最後に姫様の力を使えば完成に持って行けるだろう」


吸血鬼と化した長女は恍惚とした表情でその場に座り込む、纏う魔力も魔族の闇魔力に変わっており瘴気がチラついている


「さぁこっちを見てご覧なさい、自分がどうなったかわかる?」


「あぁ…♡はい…ルテリカ様♡私は吸血鬼になれたのですね!なんて幸せな…心地よくて心地よくて…たまらないです♡♡」


「よく言えました、さぁ起き上がりなさい、これから妹たちもみんな魔族へと変えていきますわよ、これからよろしくね!」


「はい!この身この魂、頭の先からつま先まで全てがルテリカ様のものです!」


完全に人間であることを捨てた彼女は幸福に満ちた表情でルテリカの前に跪いた、続いて堕相2人組が前に出る。


「フフフ…さてあなた方の長女は魔族としての幸福な道を歩き始めました、幸運なあなた達にもこれから同じ運命が与えられますよ…フフフフ」

「その通りねあなた、やっぱり誰かを堕落させるのって最高ね」


「あ…あぁ…」


「そんな…お姉ちゃんっ!」


「うるさい…ルテリカ様、私の愚妹たちが申し訳ありません」


「大丈夫ですわ、それにこれから魔族として生きることになりますわ、すぐに私たちに感謝することになりますわ〜!」


そして堕天使のふたりが次女の元に近づき、彼女の耳元で囁き始めたルールシエールは囁き、シーエルルーエは闇魔力を注ぎ込む…スキル【堕落の囁き】を使っているのだろう


「え、なに…あひゃぁぁぁぁあ!」


『フフフ…さぁ闇魔力に身を任せるのです…そして湧き上がってくる本能に従順になってください…心地よくなっていきますよ…フフフ』

『その通りよ、魔族になれば今までより強くなれる…弱者を力で支配する側になることができるの…最高の気分になれるわ』


「あ、ぁ…私…魔族に…なりたい…なりたいよぉ…!!」


「い、嫌っ!お姉ちゃん!」


「あんたは静かにしてて」


「ひっ…」


吸血鬼と化した長女が3女を拘束している、なんだか顔を熱っぽく赤らめておりモジモジしていた


「あらあら…あなたもしかして喉が渇いているんじゃなくて?」


「は、はい…この子を見てると…とても美味しそうで…」


「ならせっかくだしはじめての吸血はその子にしてご覧なさい?元々血の繋がりがあった子だしとっても美味しいはずですわ!ただその子も実験に使うから、吸い殺さないようにするのですわ!」


「…!!ありがとうございます!では早速…ふふっ」


「あ、あぁ…嘘…お願い正気に戻ってお姉ちゃん…」


「正気になるべきはフィーナだよ、魔族になれるっていうのに…なんでそんなに騒ぎ立てるの?」


もはや彼女には抵抗する3女…フィーナの気持ちは分からないのだろう、フィーナは遠くに行ってしまった長女を見て涙を流していた


「あっ…私変わってる…幸せ…幸せぇ♡♡」


次女の方も変化が始まっているようだった体が灰色になっていきめは黒白目へと変わる、そして悪魔を思わせるしっぽがニョキっと出てきて…彼女は魔族、魔人種へと変わった


魔人種、人間が特定の条件下で闇魔力に魅入られ心と身体、魂を魔へ捧げると変化する種族だ、裏切りルートも勇者一行は魔人種へと変わる、既に彼女からも闇魔力が自発的に流れ出ており瘴気も纏いはじめている、人間をやめた証拠だった。


「フフフ…素敵な魔人へと生まれ変わりましたね…ご気分はどうですか?」


「あっ…堕天使様のお声が…幸せぇ…♡♡じゃなくて!はいっ!生まれ変わったような清々しい気分です!魔族の体…なんて素晴らしいんでしょう…♡♡」


「どうやら完全に堕ちたみたいね、フフフっ、幸せそう、堕としたかいがあったわ」


そして額に手を当てていたアデムリが堕落の囁きが終わったのを見て手を離す


「うむ、これで揃うべき最低条件は揃ったな、あとは少し魔力構造を追求していけば完成へ持って行けるだろう」


そんなことを言い血を吸われ気絶しているフィーナの方を見る


「こいつは最後に残しておくことにしよう、姫様に直接変えていただく名誉を与えてやろうじゃないか」


「賛成ですわ!きっと素晴らしい魔族に生まれ変わりますわね!」


「フフフ…ぜひその時は魔王様や魔王妃様、グルアスにも来てもらいましょう、きっと喜びますよ…フフフ」

「その通りねあなた、お姫様の修行の成果を見せる時ですね」


「あぁ、私達の末っ子が魔族の姫様の手で変えて頂けるなんて…なんで幸福なの…」


「嬉しい…姫様!私達の妹に最高の魔族化をお願いします!」


「え、えぇ任せてちょうだい」


「では姫様、私がこの女を適当な牢屋に入れておきますね」


「あ、いや…睡眠魔法をかけてその壁辺りに座らせておいてくれる?少しやっておきたいことがあるの…」


「かしこまりました」


その後気絶したフィーナは睡眠魔法をかけられ壁際に背もたれを預けて座らされた、牢屋はさすがに可哀想だし、目が覚めたら少し聞きたいことと話したいことがあるのだ


その後は堕相2人から先程でた魔力構造の授業や活用方法などを教えてもらい、その後みんなはそれぞれの拠点に帰って行った、吸血鬼長女はルテリカについて行き、魔人次女は堕相2人について行った


「そろそろ睡眠魔法が解除される頃合ですね…姫様、どうされますか?」


しばらくの間勉強中にとったノートを振り返っているとネフィアが教えてくれた、軽めにかけのだろう、みなが帰ってからそこまでの時間は経っていなかった


「そうね…とりあえず私を彼女と2人にしてちょうだい?話しておきたいことがあるの」


「かしこまりました、では御用の際はお呼びください」


「あ、それじゃあ先に適当なお菓子とか貰える?マカロンとか」


「かしこまりました、直ぐにお持ちしますね」


そうして私はお菓子を準備した後1人になった、そろそろ彼女も目を覚ますだろう


(できるだけ本人に納得してもらえる形で魔族になって欲しい…そのためにも…)


そう、先ほどの二人のような無理やり歪められた思考を押し付けるのは気が引けるのだ、これから共に歩む仲間だ、心は通わせておきたい…


そして数分後、フィーナは目を覚ました

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る