第八話(1)

「どうしよう、私、パーティーなんて……」


 イチジクのタルトをひと切れ手に持って、リリーがふうとため息をついた。

 今日はすこし雲があるが晴れには変わりなく、風もほどよくあたたかい。長椅子のまんなかにリリーをはさんで、右に私、左にアレクシス様が並び、私たちはバラ園でのいつものランチを楽しんでいた。護衛の三人はといえば、クライルは私のうしろ、カティア様とデニス様はアレクシス様のうしろに控えている。

 あれから数日、平穏な日が続いていた。シャルノンによればディオはその後数日間、講義をすべて欠席していて、登校もしておらず、やしきにこもっているらしかった。

 私とシャルノンはあの魔獣を召喚したのはディオではないかと予想している。しかしディオはあの日も、そのあとも、一度も私の前にあらわれていない。シャルノンが言うには召喚術は膨大な魔力を消費するので、現在のアルセレニアの魔力濃度では同規模の召喚を行うにはすくなくとも半年、術者の魔力の回復速度によってはそれ以上かかるということだった。

 ひとまず、しばらくのあいだはドラゴンや魔獣に襲われる心配はなさそうだ。

 事件はシャルノンの口から学院長に伝えられて、教授や魔導師たちのあいだで協議が行われた。証拠はなにも残らなかったが、不吉な魔術陣が見つかったこと、ディオが召喚術を熱心に研究していたこと、そして私に強い執着を抱いている可能性が十分あるという状況から、彼にはしばらく見張りを付けることになったという。

 また、はっきりとした証拠が見つかるか、あるいはディオが無関係であると証明されるまで、私にはクライル、カティア様、デニス様のいずれかが順番で付き添ってくれることになった。


「生徒しか参加しないし、そんなに堅苦しいものではないよ」


 しゅんとするリリーにアレクシス様が優しく声をかける。

 リリーが心配しているパーティーは、三か月に一回開催される学院パーティーのことだ。ほとんど学院生向けの余興だが、派閥争いや腹の探り合いがまったくないわけでもない。


「でも私、パーティーなんて参加したこともないし、ダンスの授業もみんなできてるのに私だけ全然で……」

「みんな子どものころから習っているもの。当然だわ」

「私、ドレスだって持ってないし……」


 リリーはふたたびため息をついて、タルトを口に運んだ。


「おいしいっ」


 そうして、落ち込んでいたのが嘘のように瞳を輝かせる。

 その姿がぴょこんと背すじを伸ばした野うさぎのようで、私はほころぶ口もとを片手で隠した。リリーの向こうで、アレクシス様が微笑みながら彼女を見守っている。


「今日のタルトはカティアが焼いたんだ」


 「えっ」とリリーの高い声と、デニス様の低い声が重なる。私もアレクシス様も思わずデニス様を振り返った。


「すごい。強くてきれいなだけじゃなくて、お料理まで上手なんですか」

「ありがとうございます。母から教えてもらったレシピです。お口に合ってよかった」


 無邪気な声で言うリリーに、カティア様が微笑んで応じる。デニス様の背中のあたりでバンッと音がした。カティア様がたたいたのだろう。

 調子のよいデニス様をカティア様がたしなめるというのがふたりのいつものパターンだ。


「デニス様もお召し上がりになったら?」


 私は目を細めながらデニス様をからかった。

 アレクシス様のおそばにいる時間が増えると、必然的に護衛の三人とも顔を合わせる機会が増える。そのうちに私は、デニス様がどうやらカティア様を憎からず思っているらしいことに気がついてしまった。

 私が気づくのだから、アレクシス様はとうにご存じだろう。しかし肝心のカティア様自身にはまったく伝わっていないようだ。


 ――デニス様からカティア様をうばわずに済んで、よかった。


 クライルを失うかもしれないと思ったあの日、クライルの胸で泣きながら、彼が私にとってかけがえのない存在なのだと実感した。それが恋なのか愛なのかはわからないけれど、私の人生になくてはならないものだと思った。


 ――いやだ。エリーゼ。君だけなんだ。ぼくには君しか……


 ふとディオのわめき声が耳の奥に響く。

 もしもクライルに私ではない婚約者がいたら、すくなくともあんなふうには抱きしめてもらえないだろう。もしそうだったら、私が泣いていても彼はしかたなく手を離すかもしれない。すがりついても、ごめんと拒絶されるかもしれない。

 想像して、チクンと胸が痛んだ。でも、だからといって自ら命を断とうとは思わないし、心中しようとも思わない。クライルの幸せを願えるわ。きっと……。


「そうだね、せっかくだから」

「すごくおいしいですよ!」


 アレクシス様がひざに乗せたバスケットをデニス様に向かって差し出す。躊躇するデニス様を、リリーが身を乗り出してあと押しした。


「いえ、職務中ですので」

「おや。君はそんなにお堅かったかな」

「殿下」


 からかわれて、デニス様は精悍な顔だちを困ったようにゆがませた。

 デニス様は前髪もうしろ髪もクライルよりもずっと短く切りそろえて、はつらつとした印象をしている。クライルも十分長身だが、デニス様のほうがさらに数センチ頭の位置が高い。

 デニス・リッジ・ラ・メルシェ、代々メルシェ伯爵を継承するリッジ家は騎士の名家で、デニス様のふたりの弟も騎士に叙されている。

 精鋭で成り立つ王国騎士は狭き門だ。出世次第で家格が上がる場合もあるし、平民出身で叙任を受けるものがあれば、叙任と同時に爵位に準ずるナイトの称号を得ることになる。

 いずれクライルが継承するであろうフェレル家のキャストリー侯爵は別格だが、騎士位に関連する職制爵位はほかにもいくつかある。キャストリー侯爵のみが世襲制で、ほかはすべて一代限りだが、子息が受け継ぐ事例も多い。

 王国騎士はアルセレニアの花形だが、激しい出世競争がくり広げられる世界でもある。こと近年は実力主義の機運が高まっているというから、息子三人を騎士として送り出したリッジ家はかなり高く評価されている。

 そしてそのリッジ家の嫡男ちゃくなんとして生まれ、いまや家督を継いでメルシェ伯爵となったデニス様は将来のキャストリー侯爵と並んで王太子殿下の近衛騎士を務めている。そうなると、フェレル派かリッジ派かと派閥ができあがるのもしようがない。

 しかし、外野の対立はともかく、クライルとデニス様、当人たちの関係はいたって良好だ。

 そんな出世頭のふたりだが、クライルにはすでに私という婚約者があり、しかし年長のデニス様はまだ縁談をまとめられていない。そうなると良縁を求める令嬢たちの椅子とりゲームはより熾烈になる。

 そのため、カティア様は出世競争のライバルとして男性たちから妬まれるだけでなく、デニス様にもっとも近い未婚の令嬢として女性からの嫉妬も集めてしまう。それを知ってから、ひたすらまじめに職務をこなすカティア様がどうにも不憫に思われてきた。

 カティア様もまだ身を固めてはいらっしゃらないし、彼女の味方を増やすという意味でも、デニス様にはこのあたりで男気を見せてもらいたいものなのだが……。


 ――この時間が失われなくて、本当によかった。


 バラの香りにほっと胸をなでおろしながら、私もイチジクのタルトをひとくちいただいた。甘さも焼き加減もほどよくて、ワンホールでも食べられそうだ。


「残念だわ。こんなにおいしいのに」


 私は困り顔のデニス様に微笑みかけた。


「ところでカティア、このあいだの話は考えてくれたかい?」

「まさか。ご冗談では?」

「先方から返答の催促を受けてね」


 アレクシス様が今度はカティア様を振り返る。カティア様は驚いた顔をして、それから困惑の色を浮かべた。

 リリーが臆面もなくアレクシス様に問いかける。


「なんですか?」

「縁談だよ。古いつきあいの友人がカティアをいたく気に入ったそうで……」

「縁談?!」


 アレクシス様の声をさえぎって、デニス様が大きな声を出した。


「優秀な人材の流出は手痛いところだが、彼も悪い人ではないしね」


 アレクシス様はいつも通り温厚に言った。アレクシス様の古いご友人で、かつ人材の流出につながるということはお相手は他国の王侯貴族だろう。カティア様に目をつけるとはなかなかお目が高い。


「殿下。おそれながら、私は騎士を辞するつもりはありません。アルセレニアの未来に生涯を捧げると誓って、騎士の道を選びました」


 カティア様は困った顔で、けれどはっきりと言い切った。その横顔がとても美しかった。


「では一生、誰とも添い遂げるつもりはないと?」

「そこまでかたくなではありません。騎士を辞めろと言われないのであれば、一考の余地はあります。するより婿をとるほうがありがたいですが……」


 アレクシス様が追加した質問に答えながら、カティア様は言葉を濁した。

 たしかに、彼女はティターニア子爵家の一人娘で嫡子ちゃくしだから、カティア様がお嫁に行ってしまうとティターニア子爵家の存続が危ぶまれる。

 しかし、現行の貴族法では廃家から五十年のあいだは血族による無条件の再興が許可されているから、彼女の子どもにティターニア子爵を継承させるという手もある。

 継嗣けいしが誕生しなかった場合、爵位は王国へ返上となるから、もちろんそのリスクはあるが……昔とちがっていまは女性にも家督の相続が認められているし、貴族同士の結婚であれば表向きは家格の差にもそれほどうるさくなくなった。貴族の婚姻にもある程度の自由やゆとりが許されるようになってきている。


「ほかにも条件がありそうだね」

「それは……」


 アレクシス様がやんわりとうながすと、カティア様は口ごもりながら視線を泳がせた。そんなカティア様の様子をとなりに立ったデニス様が横目でじっと見つめている。

 こんなにわかりやすいのに……と思ったけれど、人間、案外自分のことには鈍感だったり、見当はずれだったりするものだわ。


「……私より、強い人でないと……」


 アレクシス様にじっと見つめられて、カティア様はうつむきながら小さな声で言った。


「それは難題だ」


 いままでだまっていたクライルがぶっきらぼうに言う。ここまで言ってしまえばと吹っ切れたのか、カティア様はため息をひとつ、顔を上げて赤らめた頬を両手でパタパタとあおいだ。


「私より強い男性は、どう考えても婿にはきてくれません」

とついでもかまわないのだろう?」

「そうですけど……私は理想が高いんです。強情っぱりのき遅れですからね。ここまできたらとことん理想を追求しないと。面白いですか、結婚できない女をからかって」


 カティア様がすねたように言ってみせると、ふたたびクライルが口をひらいた。


「となりに結婚できない男もいるが」


 視線がデニス様に集まる。

 カティア様にデニス様、お互いに断れない縁談がこないとも限らないし、そうなってからではあまりに悲劇だ。はたから見てもお似合いのふたりだし、気持ちがあるなら伝えられるときに伝えたほうがよいのではないかしら。


「じゃあ……」


 視線を集めたデニス様が落ち着かない様子で腕を組む。


「ちょうどいいし、もらってやろうか」

「私、えらそうな人はきらいなので」


 デニス様の精一杯の告白に、カティア様は軽蔑の色を浮かべてそう返した。デニス様自身が冗談半分だったからとはいえ、カティア様の言葉がドッ、と彼の胸に突き刺さったのが見て取れた。

 アレクシス様が苦笑いしながら自分のタルトを口に運ぶ。よかれと思ってお膳立てしたのに失策に終わった、という顔だった。

 はあ、とクライルがこれみよがしにため息をついた。


「エリーゼさん。私気づいてしまったんですけど……」


 はわ、と、いつもの不思議な鳴き声を出しながらリリーがささやき、私のほうへ身を乗り出した。

 私は「そうよ」という気持を込めて唇に人差し指をあてた。


「そういえば、リリー。ドレスがないと言っていたけど……あなたさえよかったら、私が用立てましょうか」


 これ以上ここでデニス様をつついても、ふたりの関係によい影響を及ぼすとは思えなかった。あまりいじめても可哀そうだし、私は話題をそらすことにした。


「えっ、あっ、でも、そんな」

「侯爵に頼めば用意してくださるかもしれないけど、あなた、すぐに遠慮してしまいそうだもの。せっかくなら気に入るものをつくりましょう。邸に仕立て屋をよぶわ。ちょうど私も、新しいドレスがほしかったの。ほんのついでよ」

「よかったね、リリー。エリーゼの見立てならまちがいない。これでパーティーに参加できる」


 リリーが気負わぬよう言い添えると、アレクシス様が退路を断った。

 アレクシス様と一緒に昼食をとるようになったのはさすがにリリーがやってきてからで、それまでもそれなりに親しかったといえば親しかったが、私と彼のあいだには友情とはちがう、私たちの距離はここまでと互いに線を引くような空気があった。しかしいまではその線引きがあいまいになって、意外と気の合う友人になれそうな気さえしている。

 編入当初はあやふやだったリリーの立ち位置も、最近は王太子派に寄り添いはじめ、王太子派の貴族たちからは特に親しみを持たれつつあるようだ。

 私はもともとクライルの婚約者だし、クライルのお父様のキャストリー侯爵が後継争いにおいてはアレクシス様を支持していらっしゃるので、父のアシュテンハイン辺境伯を含めフェレル家と親しいミュフラート家は自然と王太子派に組み込まれている。

 そのうえこのごろはリリーやアレクシス様と一緒にいることがほとんどだから、所属派閥に敏感な令息令嬢からすれば、アシュテンハイン辺境伯令嬢を無下に扱うわけにもいかなくなってきた。私への態度がアレクシス様に対する立場の表明であると受けとられかねないからだ。

 そのため、学院での私の立場はもと通りどころかそれ以上の厚遇になってしまった。「悪役令嬢」というミモザ様発案のあだ名も、いまでは王弟派や神殿派など王太子派と対立する家柄の生徒が陰口に用いる程度になった。


「でも私、ダンスが……」

「無理に踊らなくても大丈夫。当日は私がエスコートしよう」


 必死に抵抗するリリーに、アレクシス様が微笑みかける。そのまなざしを見て、あら、と引っかかるものがあった。


「えっ、それはまずいです!」

「まずい?」

「あの、私は大丈夫ですから、アレクシス様はアレクシス様が大切にすべき人を大切にしてください」


 リリーが祈るようにアレクシス様に訴える。アレクシス様は一瞬表情を失ってから、苦笑いを浮かべた。


「そうか。君は、私の婚約者の心配をしているのかな?」


 リリーは長らく、私をアレクシス様のフィアンセだと勘違いしていた。なるほど彼女はアレクシス様には将来を誓った相手がいるはずと思い込んでいるのだ。


 ――あの事件を知らないから。


 なごやかだったバラ園がぎこちない空気に変わる。けれど、割って入るのもごまかすのも不自然だった。

 アレクシス様はそのまま言葉を続けた。


「そうだね、たしかにそういう女性がいたけれど、ふられてしまったんだ」

「えっ……」


 リリーが困惑して私たちの顔を見まわす。彼女はいまの言葉が嘘でも、自分がからかわれているわけでもないと察して、おそるおそるアレクシス様に視線をもどした。

 二年前、アレクシス様の婚約者だったトレジエ侯爵家のシュゼット様が出奔しゅっぽんした。駆け落ちだった。シュゼット様と手をとり合って国を逃れたのは、当時アレクシス様の近衛騎士を務めていたマーカム子爵、エヴァン様だった。

 ちなみに、そのエヴァン様の穴を埋めるために配属されたのがカティア様だ。

 シュゼット様の父親、トレジエ侯爵は長年宰相を務めていらして、海軍贔屓で有名だった。贔屓というと語弊があるが、ようは海上防衛を重視していたのだ。末娘のシュゼット様をともなってアシュテンハインの邸をおとずれてくださったことが何度もある。私も王都へ旅した際には必ずトレジエ侯爵のお邸におうかがいして、立派な庭園をシュゼット様と一緒に駆けまわった。

 私とシュゼット様はちょうど同い年で、控えめな性格のシュゼット様はなにかあると私のうしろに隠れがちだった。私たちはお互いに足りないものを補い合うような、仲のよい友人だった、と思う。

 シュゼット様とアレクシス様の婚約がまとまったのは私たちが十才のときだった。ちょうど私が王都に滞在してシュゼット様と遊んでいたときのことで、殿下にあいさつするために登城するのだと言われたシュゼット様は私のうしろに隠れてしまった。

 エリーゼ様と一緒にお城の庭で遊んでいってらっしゃい、と、大人たちがシュゼット様を説得したので、私も一緒に登城したのをおぼえている。

 やがて私たちは十五才になって、学院への入学が決まり、私は海辺のアシュテンハインから内陸の王都の邸へ移った。これからはいつでも会えるとよろこび合っていたのに、学院の制服に身を包むようになってたった数ヶ月で、私たちはけんか別れすることになった。


 ――私のせいだったかもしれないと思うときもある。


 あの日、シュゼット様は私に秘密の相談をもちかけた。


 ――私、好きな人がいるの……


 彼女は私にエヴァン様との秘密の恋を打ち明けた。そして私はそんな彼女をたしなめた。

 アレクシス様は昔からお優しいかただった。私はシュゼット様とエヴァン様の恋はアレクシス様のお心を踏みにじる非道な行いだと述べて、彼女と口論になった。

 そしてその数日後に、シュゼット様は真夜中に邸を抜け出し、エヴァン様とともにこの国を去った。

 翌日中に追っ手が差し向けられたが、アレクシス様のご配慮で捜索は早々に打ち切りになり、その後ふたりがどこでどんなふうに暮らしているのか誰にもわからない。

 シュゼット様の父親のトレジエ侯爵は宰相の職を解かれ、侯爵位も返上した。しかしこれもアレクシス様のご配慮で、いまはカドラル伯爵として辺境の小さな領地を与えられている。

 マーカム子爵家はさすがに取り潰しになった。息子に家督を譲って隠居していた両親と未婚の妹は王都を出てそれきり音沙汰ないという話だ。

 王太子の婚約者がこともあろうに近衛騎士と駆け落ちするという前代未聞のスキャンダルは、またたく間に社交界に知れ渡った。そして、年ごろの娘を持つ貴族にとってはまたとない好機となった。

 アレクシス様に見初められれば王妃になれる、そんな期待と野心が学院にかよう令嬢たちにも、その親たちにも芽生えたのだ。

 シュゼット様の駆け落ちで婚約が破談になってすぐ、アレクシス様には膨大な数の縁談がもちかけられたと風のうわさに聞いている。しかしアレクシス様は学院を卒業するまではと縁談をやんわりとしりぞけ、ひとりの女生徒を特別扱いするということもなく――……

 特別扱い、することもなく?


「だから君をエスコートしても、誰も文句は言わない」


 アレクシス様は優しく首をかしげながら、リリーをのぞき込んだ。リリーはちょっと背中を緊張させて困ったように私を見た。


「仕立て屋をよんでおくわね」


 私はどこか浮き立った気分になりつつも、それを隠してリリーににこりと微笑みかけた。

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