第六話

 それから謹慎が明けるまでの三日間は何度かくり返した夢とほとんど同じで、おだやかにすぎた。

 すべて夢だったのだと思いながらも、同じ日をくり返しているのではという疑念から逃れきれない。安堵と疑心が同居する奇妙な三日間だった。


 ――もし、夢をくり返しているなら、また……


 学院の制服に着替えながら、三日間幾度となく頭のなかをめぐった考えがふたたびよぎって、ひどく憂鬱になる。


 ――夢をくり返しているとしたら、いまも夢なのかしら。


 つまり私は夢を見続けているのだろうか。覚めない夢ならそれが現実なのかもしれない、と思いながら姿見に映る自分を見つめた。

 やはり制服はすこし大きくて、痩せたようだった。


「浮かないお顔ですわ」


 革のかばんを差し出しながら、アニタが心配そうに言った。私は「ええ」とうなずきながらあいまいに微笑んだ。


「ご気分が優れないなら、無理せずお休みになられては」

「大丈夫。逃げたと思われるのもしゃくだもの」


 私が茶化すように言うと、アニタは困り笑いを浮かべた。

 邸を出ると、やはり立ちくらみがするほど快晴だった。門の前には馬車が停まっていて、そのかたわらにクライルの姿がある。それを見てひどくほっとした。


「おはよう」

「おはよう……」


 歩み寄る私に、クライルはいつもの神経質そうな顔で声をかけた。そうだわ、まず馬車に乗るか乗らないか、と考えて、いままでとはちがう第三の行動を思いついた。


「送って行こう」

「いえ……今日は歩きたいの」

「そうか。わかった」


 クライルが御者に向かって軽く手をあげると、馬車は大通りのほうへ去って行く。


「ねえクライル。大通りを通りたいの」

「遠まわりだ」

「久しぶりの外出だもの。さ、早く」


 いぶかしげなクライルの手を自分からとって、私は小走りに門を出た。過去に二回、私が徒歩を選んだときに大通りで事故が起きた。そしてその直後にのだ。


「どうしたんだ」


 大通りへ急ぐ私にクライルが心配そうな声をもらす。


「夢を見たの。何度も……。通りで事故が起きて、助けに行こうとすると目が覚めるの」


 正直に伝える私をクライルは肯定も否定もしなかった。ただだまって聞いて、私に歩調を合わせてくれた。

 大通りへ出ると、私たちが乗らなかった馬車に追いついた。通りで客を拾っているところだった。そして、その馬車が走り出して遠ざかるのを眺めているとキャーッと甲高い悲鳴があがった。

 馬のいななきがして、目で追っていた馬車がぐらりとゆれたと思うと不自然に向きを変えてとまった。

 駆け寄ると、幼い子どもが大声をあげて泣いている。そして学院の制服をまとった亜麻色の髪の少女が、レンガ敷きの道に倒れていた。


「リリー……」


 ささやきながら、私はふらふらと倒れた少女に歩み寄った。


「子どもが飛び出して、そうしたら女の子が……」

「早く医者ァよんでこい!」

「だめだ、治癒師じゃなけりゃ、間に合わねえよ」


 ざわめきを聞きながら、私はその場にひざをついた。亜麻色の髪をおさげに結った女子生徒は、目をつぶって、うっすらと唇をひらいて、微動だにしなかった。頭を強く打ったのだろう。レンガの道に血だまりが、すこしずつ広がっていた。

 すうっ、と目が覚めて、私はまた自分の部屋にいた。目の前にひらいている『アルセレニア興国史』はやはり九十八ページだ。


「シャルノン。私、眠っていた?」


 私はテキストを見つめたまま聞いた。となりから「ええ」とシャルノンの声がした。私は深く息をついて、額に手をあてた。


「覚めない夢なら、現実かしら」

「そうでしょうね」


 私が問いかけるとシャルノンはいつもの、感情があるのかないのかわからない淡々とした声で言った。


「今日が五回きたわ。気がつくとこの椅子で目覚める。そろそろ興国史の九十八ページを暗誦あんしょうできてしまいそう」

「そうでしょうね。ぼくも何度説明したかわかりません」


 シャルノンの言葉に、私は目を見ひらいてとなりを振り返った。

 シャルノンは相変わらず地味な色のだぼついたローブをまとって、背中を丸めている。彼はちらりと前髪の隙間から、横目で私を見たようだった。


「私たち同じ夢を見てるの?」

「現象としては今日を起点にくり返していますね。起点にもどる際に時空が若干ゆらぎますから、時空転移が起こっているんでしょう」


 言いながら、シャルノンは指先を真横に動かして、そのあと半円をえがくように始点にもどした。


「じゃあ、みんなくり返しているってこと?」

「むずかしい質問ですね。ぼくとあなたの意識は時空と一緒に転移しているんです。だからくり返しているように感じる。しかし意識の転移をともなわなければ、くり返していることに気づかない。くり返していてもくり返していることに気づかなければ、くり返していないのと同じです」


 いつもの授業と同じシャルノンの平坦な説明を聞きながら、私は自分のこめかみに指を置いた。

 シャルノンはのんきに「それでは次から、テキストのページを改めましょう」と言って椅子を立った。そうだ、彼は学院の講義に行かなければならないのだ。


「どうして言ってくれなかったの」

「あなたも言いませんでした」

「……そうね。自分でも信じていなかった。信じてもらえるとも思わなかったわ」

「ただでさえぼくは変人ですから」


 シャルノンはほんのすこし肩をすくめてみせた。


「ぼくはこれから学院へ向かいますが、講義は休講です」

「どうして」

「神殿に呼び出されるんです。聖なる泉に、異界の少女があらわれたから。続きは今夜お話しましょう」


 シャルノンの言葉が終わるのと同時に、アニタがドアをノックした。お茶とお菓子を持ってきたのだ。


「それでは」


 シャルノンは軽く会釈してドアをあけた。入れ替わりにアニタが入ってくる。


「お嬢様。お茶をお持ちしました」

「……ありがとう」


 クロスを敷いた丸テーブルにアニタがお茶の用意を整える。勉強机を離れながら、私は彼女の仕事ぶりを眺めた。お菓子はやはりレモンアイシングのケーキだし、紅茶の香りはオールド・ミストだ。


「アニタ。アイシングケーキを焼くのは何回目?」

「今日ですか? 今日はお嬢様のためにおつくりしただけで、ひとつしかございません。シャルノン様のお夜食にお渡ししてもよろしいかと、残りもとってありますが……」


 アニタはスミレ模様のティーカップを置いて、いつもと変わらないおだやかな表情で私を振り返った。私はあいまいに微笑んで、テーブルの上のケーキを見つめた。


「ねえアニタ。今日、私があなたのケーキを食べるのは五回目なの。どうやら時間が――」


 言いかけて、はたと気づくと勉強机に向かっていた。机の上に『アルセレニア興国史』の例のページがひらいている。


「最短記録ですね」


 となりでシャルノンが言った。起点にもどったのだ。


「どうして」


 強い口調になってシャルノンを振り返ると、彼は自分のせいではないとでも言いたげに肩をすくめた。


「時空の転移にはさまざまな制約をともないます。残念ながらぼくにはこのあと予定がありますから、ひとまず今夜まで、いままで通りすごしてください」



 シャルノンに言われた通り、私はアニタに余計な質問をせず大人しくケーキを食べて、いままで通り読書をして午後をすごした。

 夕食の前になって、アニタが今日もクライルがたずねてきたと教えてくれた。謹慎が明けるまでの三日間、クライルは毎日やしきをたずねてくる。いままでとまったく同じだ。彼は私が会わないことを承知しているので、対応した使用人に私の様子をたずねるだけですぐに帰るらしかった。

 今日の夕食のメニューもくり返したすべての今日と同じだった。春野菜のサラダにほうれん草のスープ、白身魚のパイ包み、デザートはラズベリーのシャルロット。

 この邸の料理長はメニューや食材のバリエーションに非常にこだわる人だから、テーブルに頻繁に同じ料理が並ぶことはない。彼が私のようにくり返しているとしたら、今夜の晩餐もちがう献立に変わるはずだ。

 アニタやほかの使用人にも取り立てて変わった様子はなく、みんないつも通りだった。くり返す日々にとまどっているふうもない。

 私がクライルと顔を合わせるのは謹慎が明けてからだが、彼がくり返しを自覚しているかどうかは……わからない。私のようにおかしな夢だと思いながら、それでもただくり返しに身を任せている可能性もあるし、まるきり気づいていないかもしれない。


 ――時間をくり返しているのだとしたら……


 私が馬車に乗らないと、その馬車にリリーがはねられる。馬車に乗れば学院へたどり着いて彼女と出会う。そしてまた、くり返すのかしら……。

 シャルノンを待ちながら、私はバルコニーで夜空を見上げた。

 日中はすっかりあたたかくなったが、夜風はまだ肌寒い。夜空に雲はなく、またたく星屑が見渡せた。どこからかハリエンジュの甘いにおいがただよってきて、ほう、とため息が出る。

 控えめなノックが聞こえたので、私は振り返って「どうぞ」と声をかけた。のそりとあらわれたのはシャルノンだった。

 私は部屋にもどって、窓を閉めた。シャルノンと一緒に入ってきたアニタが丸テーブルにあたたかいお茶を用意してくれている。彼女はてきぱきと仕事を終えて、すぐに部屋を出て行った。


女神の化身セフィーラがあらわれたの?」

「ええ。彼女のことはご存じですか」


 丸テーブルの椅子を引いたシャルノンに問いかけると、彼は椅子に深く腰かけ、シュガーポットの蓋を取った。

 聖なる泉にあらわれた異界の少女――それがリリーなのだろう。


「謹慎が明けたあと、学院で会ったわ」


 私はシャルノンの質問に答えて、彼と向かい合うように丸テーブルについた。シャルノンはティースプーンですくった砂糖を自分のカップに三杯ほど入れて、くるくるとかきまぜた。


「では、セフィーラの話からはじめましょう。彼女たちがアルセレニアにどのような貢献をしてきたかはご存じですね」

「もちろん。彼女たちは危機にあらわれて、アルセレニアを必ず救済する」

「そう。彼女たちは必ずこの国に救いをもたらす。どんな苦難をも克服します」


 そう言って、シャルノンは甘い紅茶に口をつけて、ふうと息を吐いた。相変わらず自分のペースだわ。

 私はシャルノンの次の言葉を待ちながら、砂糖は入れずに紅茶のカップを手に取った。


「時空学はなかなかマイナーな分野です。熱心な研究者はいますが、理論として成立はしても事象としての再現がむずかしいものも多い。その時空学上、セフィーラとしてあらわれる女性たちは、時空の転移を引き起こして最善の結果を得るまでその円環えんかんにとどまるのではないかと考えられています。そして彼女たちがたどり着いた最善だけが歴史に残る」

「にわかには信じがたいわ」

「しかし、実際にあなたは時空の円環のなかにいる」

「時空の円環というのはつまり……」


 シャルノンが使った言葉をくり返しながら、私は空中に人差し指で円をえがいた。


「円環は比喩です。時空学上、くり返しの構造をそう表現しているだけですね。なにかが円をえがいているわけではありません。厳密には、時空転移は起点からはじまって未来へと進むなかで、転移の条件を満たしたときに発動します。そこから起点にもどるわけですね」

「転移の条件というのは?」

「それはぼくよりもあなたのほうが詳しいのでは? ぼくは例外なだけで、直接関与していません」


 そう言われて、私はソーサーの上のあたたかいカップを両手で包みながら記憶をたどった。

 シャルノンのいう時空転移によって、私は興国史九十八ページの前にもどされている。条件を満たした瞬間に転移が起こるのなら、自分の部屋で目覚める直前にきっかけがあるはずだ。


「いちばん最近のものは、アニタにくり返しのことを話そうとしたときだった」


 私が答えると、シャルノンは「なるほど」とうなずいた。


「他言の制約ですね。どの歴史書もセフィーラたちの時空転移への言及はしていません。公式に記録を残さなかったというより、残せなかったのでしょう」

「でも、あなたに話しても平気だわ」

「ぼくは例外ですからね。魔導師というのは、そういうものです」

「……ややこしい」


 私はため息をついて、シャルノンの厚い前髪を見つめた。

 シャルノンもそうだが魔導師や魔術師、あるいは魔法分野の研究に没頭する人たちは、同じ時空に存在しながら私たちとはちがう世界を見ているようなふしがある。そのなかでもシャルノンは飛び抜けて変人だ。彼の言葉はとてもシンプルで、そのせいで複雑なのである。


「ほかは……」


 ほかにどんなきっかけがあったかを考えて、私は視線を落とした。


「どれも……リリーが……」


 ささやいて、記憶のひとつひとつをたどってみる。時間がもどるのは馬車の事故が起こったとき、つまりリリーが馬車にはねられたときだ。それから一度だけ、彼女がけがと毒によってまさに死に瀕していたとき。

 私のひざに頭をあずけた彼女が、瞼を閉じて力なく横たわる姿が思い出された。


「リリーが命を落としたとき……かもしれない」


 私がつぶやくと、シャルノンは無言でシュガーポットの蓋をあけて、容器を手にとると砂糖を紅茶にふりかけた。甘いものが好きなのは知っているけど、そんなに入れたら紅茶味の砂糖を飲んでいる気分になるんじゃないかしら。


「では、すくなくとも転移の条件はふたつ。その条件を満たさなければ時が進むということですね」


 シャルノンはそう言いながら念入りに紅茶を混ぜた。


「リリーの記憶はどうなのかしら。時空転移という現象がセフィーラが最善の歴史を選ぶために引き起こされるのだとしたら、彼女もくり返しを自覚していなければおかしいんじゃないかしら」

「本来であれば、そのはずです」


 気になる言いかたをして、シャルノンは紅茶からスプーンを引き上げ、カップに口をつけた。

 私の記憶に残る限りで三回、リリーは大通りで馬車の事故に遭っている。三回とも私が馬車に乗らなかったときだから、シチュエーションはそう変わらないはずだ。


 ――リリーは自分の死を回避していない……


 人は学習する生き物だ。この先で馬車にはねられるとわかっていたら、ちがう行動を選ぶのが自然ではないだろうか。

 リリーはおそらく道路に飛び出した子どもを助けようとして、馬車と接触した。子どもを見殺しにできないとしても、未来がわかっているのなら、そもそも子どもが飛び出さないよう手を打つこともできるはずだ。


「円環の起点は彼女がアルセレニアにあらわれた瞬間です。この現象は彼女が引き起こしたと考えてまちがいないと、ぼくは思いますね」


 シャルノンはソーサーにカップをもどしながら言った。


「しかし、彼女の記憶はかなり混濁しているようです。なにか夢を見ていたくらいのうっすらとした感覚があるだけで、記憶としてはっきり残ってはいないようでした」


 私がリリーと言葉をかわしたのは、何度かくり返したうちの一回だけだ。けれどシャルノンは今日、神殿で何度もリリーに会っているのだろう。

 時の円環、いいえ、まるで牢獄だわ。途方もない、と思うと同時に気が遠くなるような感覚が襲ってきた。リリーに自覚がないとしたら、彼女は自分の死を予見できない。

 時空学とシャルノンの考察が正しければ、リリーは本来、失敗を学習して最善の歴史を選んで行くはずだったのだ。それが女神の化身セフィーラに与えられた試練であり、またアルセレニアを救う究極の手段だったのだろう。


「私たちは、これからずっとくり返すの?」


 私は低い声でシャルノンに聞いた。私はティーカップの模様を見つめながら、動かないリリーとカティア様の姿を見ていた。


「条件が満たされれば、そうですね。つまり、その条件を回避さえすれば時は正常に流れ行くということでもあります。しかし、セフィーラ本人に学習の機会がないとすれば、舵を取れるのは……」


 シャルノンがだまったので、私は向かい会った彼を見た。前髪の隙間からきれいなペリドット色の瞳がのぞいて、こちらを見つめている。めずらしくシャルノンと目が合った。

 彼は見つめるだけで、続きをしゃべろうとしなかった。


「……私たち?」


 しかたなく私がつぶやくと、シャルノンはすこしうつむいて前髪で瞳を隠した。そうしてちょっと肩をすくめる。


「ぼくは」

「例外かしら」


 私は呆れた気分でシャルノンの言葉を先読みした。


「その通りです。あなたはそんな顔をしますが、観客が舞台に上がるようなものと考えてください。おおげさに言えば、ことわりを乱します。まともな魔導師であれば手を出しませんし、第一、まともでなければ例外にはなれません。ぼくはですが、魔導師としてはまともというわけです」


 シャルノンはいつも通りの淡泊な声で言った。彼が言うなら、そうなのだろう。シャルノンは私には理解できない世界を見ていて、この世というものを私よりもよく知っている。

 私は小さくため息をついて、納得した。


「私も例外という可能性は?」

「その可能性は極めて低いですね。時空転移の主体が『リリー』だとすると、あなたは彼女と縁があるようですし、彼女の力の波及を受けて、さらにそこになにかしらの制約がはたらいて『リリー』からあなたに主体性が譲渡されたのかもしれません」

「そんなことがありえるの?」

「現にありえていますよね?」


 シャルノンがすこし首をかしげると、前髪の隙間にちらりとライトグリーンの瞳がのぞいた。

 私の切れ目とちがって、シャルノンはとても温厚な目もとをしている。猫背も長い前髪もよれよれの服もすべてが辛気くさいのに、瞳だけは陽に透ける若葉のようにすがすがしい。目もとを出せばもうすこし明るい印象になりそうなのに、彼はかたくなにそうしない。

 シャルノンの明るい色の瞳を見つめていると、木漏れ日に包まれているような気分になる。それ以外は湿った土のような人なのに、皮肉なものだ。


「条件を満たさなければ、時間が正常に進むのね?」

「ひとまずは。しかし他に制約がないとも言えません」

「たしかに、そうね」


 私は、やけに落ち着いた気分でうなずいた。


「私はくり返さなくていいのね? 時空転移を回避すればいいのよね?」


 私が確かめるように聞くあいだ、シャルノンは私をじっと見つめ返していた。シャルノンが例外になってくれたおかげで、ひとりでくり返すよりはずっと心強い。

 過去にアルセレニアを救ったセフィーラたちに味方はいたのかしら。それとも、たったひとりで延々とくり返す時間に立ち向かったのかしら。


 ――いずれにせよ、彼女たちはやり遂げたんだわ。


 たとえば馬車に乗るか乗らないか、行動を変えれば未来が変わる。そうして彼女たちは災厄や悲劇と何度も戦い、最善の歴史を残したのだろう。

 シャルノンは「そうでしょうね」とうなずいて、瞳を前髪に隠した。


「さきほど説明した通り、ぼくは直接的な関与は避けます」

「相談くらいは平気かしら」

「そうですね。しかし、あまりあてにはしないでください。理が乱れると、世界の在りかたそのものが変質してしまう。過去も未来も失われます」


 淡々と言いながら、シャルノンはふたたびティーカップに指をかけて、残った紅茶をじっと見つめているようだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る